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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
ピアニストが演奏する曲はいつのまにか古いドイツの唄に変わっていた。

…いつか、あの街灯の下で会いましょう…。
昔のように…。

第二次大戦下、ドイツで…ヨーロッパ中で流行した美しくミステリアスな女優が歌った愛の唄だ。
金髪碧眼の歌手がハスキーな声で歌うそれは、この名門だがどこか気怠げな退廃美に溢れたクラブに良く合っていた。

「ダンスは踊れますか?」
片岡が優しく話しかける。
「…少しだけ…」
由貴子は少し戸惑ったように頷く。
「充分だ。…さあ…」
片岡の手が由貴子の白い手を握りしめ、フロアへと誘う。

…夜霧が辺りを包む頃、あの街灯の下で…
昔のように…

仄かな照明の下、片岡の逞しい腕が由貴子の華奢な身体を抱く。
由貴子の白くほっそりとした腕が片岡の肩にそっと置かれる。
すらりと長身で均整のとれた体躯の片岡と、美しいスタイルで華やかなチャイナドレス姿の由貴子は、周りの客たちの視線を一瞬にして奪い、魅了した。

…金髪碧眼の歌手が、物憂げな眼差しで二人にウィンクを投げかけた。


…夢のように浮かぶのは、君の面影…。
だから、恋人よ…
昔のように…。
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