この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
「…それはなぜですか?」
「私は、もう子どもを産むことはできません。
…元々授かりにくい体質で、娘を授かったのも奇跡に近いと医師に言われました。
…私はもう四十四歳です。
ですから宮緒さんと結婚しても、彼に子どもを授けてあげることはできません。
宮緒さんはまだまだこれからの方です。
彼はお美しくてお仕事も出来て理知的で…何より優しく温かく素晴らしい男性です。
いくらでも良いお相手は現れるでしょう。
…私と一緒にならなければ、子どもも諦めなくても良いのですから」
しばらく男は寂しげに眼を伏せた由貴子を見下ろしていたが、やがて静かに尋ねた。
「…真紘が子どもを欲しいと言ったのですか?」
「いいえ」
「ではなぜそう決め付けるのですか?」
「…え?」
思わず見上げたその瞳を真摯な眼差しに捉えられる。
「子どもを持つことが人生の幸福のすべてではありません。
幸福の形は、人それぞれです。
真紘が望む幸せは、貴女とともに人生を歩むことなのです。
…あとは貴女の覚悟次第なのではありませんか?」
「…片岡さん…貴方…」

片岡がふとテーブルを振り返る。
…宮緒がその端整な貌にやや不安げな表情を浮かべてこちらを見ているのに温かな微笑みを送りながら、口を開いた。

「…真紘はとても良い子です。
それなのに…かつて私は真紘を酷く傷つけてしまいました…。
今でもその後悔は私の胸に深く突き刺さっています」
どこか冷ややかに高慢的に整った片岡の貌に微かな痛みが走る。
「…片岡さん…」
握りしめられた由貴子の手に、柔らかな力が加えられる。
ゆっくりと振り返った眼差しが幽かに光っていた。

「…私は真紘に幸せになってもらいたいのです。
…本当に愛する人と二人で…」
驚く由貴子を片岡はまるで優しい兄のような仕草で抱きしめた。
「…弟を頼みます…。由貴子さん」


微かな哀惜を含む美しい愛の唄が、二人をそっと包み込む。

…あの街灯の下でまた会おう…
昔のように…
愛しい人…



/198ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ