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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
「…全く、兄さんの気まぐれにも困ったものだよ」
宮緒はため息を吐きながら、大階段を降りてゆく由貴子をエスコートする。
「いきなり帰ってしまうだなんて…。
…しかもこれから蘇州に行くって…唐突すぎる。
何だったんだ…本当に…」

由貴子は宮緒の引き締まった腕にそっと触れながら微笑む。
「…とてもいい方だわ…」
…先ほどの男の囁きを思い返す。


「…真紘はいい男です。
少し頼りなく感じるところがあるかもしれませんが、それは彼の優しさです。
…だから…彼を信じてやってください。
どんなことがあっても…」


心配そうな眼差しが由貴子を見下ろしている。
「…兄さんと何を話していたの?」
由貴子は長く濃い睫毛を瞬かせ、悪戯めいた瞳で微笑った。
「…内緒よ」
不満そうな宮緒の腕に頰を寄せる。
「…でもね、ひとつだけ…」
「うん?」
「…あの唄…。
お兄様の想い出の唄なんですって…」

…クラブ歌手の気怠く甘い歌声が、脳裏に蘇る。

…いつか街灯の下で会いましょう…
昔のように…
愛しいひとよ…

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