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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
「僕が愛しているのは、由貴子だけだ。
信じてくれ」

…由貴子の手が、宮緒の両手からぎこちなく引き抜かれる。
独り言のような…そして諦観に満ちた言葉が、その美しい唇から漏れた。
「…私が愛するひとは皆、澄佳さんを愛しているのね…」
「…由貴子…?」
哀しげな…また、やや憤りを含んだ眼差しが宮緒を射る。
「…それに…貴方は最初から私が柊司さんを愛していたことを知っていたのね?
澄佳さんと結婚した柊司さんが、私の義理の息子だということを…」
「…それは…」
思わず口籠ってしまう。
…確かにそうだ。
あの駅舎で会い、由貴子から秘密の告白を聴いた時からその複雑な関係性は知っていた。

「…私を憐れんでいたの?
可哀想な女だと思って、私を抱いたの?」
「それは違う!」
気色ばむ宮緒を涼やかな…冷めた印象すら与える瞳が見つめる。
「ではどうしてすぐに言ってくださらなかったの?」
「それは…君を煩わせずに納得してもらう自信がなかったんだ。
もう少し時間をかけてと思っている間に、時間が過ぎてしまって…」
「私は何も知らないまま…貴方のお兄様にまでお会いして…。
それに…お兄様…片岡さんは澄佳さんとお付き合いしていらしたのでしょう?
…そんな…私たち複雑な関係なのに…」
…愛人だったと言わないところが、由貴子の細やかな配慮であり、優しさであった。
そんな由貴子をとても愛おしいと改めて思う。

「由貴子、確かに僕たちの関係は複雑だ。
けれど、それらは僕たちの愛でいくらでも乗り越えられるはずだ」
熱く説き伏せようとする宮緒に、由貴子は力なく首を振り、眼を伏せた。


「…私たちが結婚すれば、いずれ貴方と澄佳さんは貌を合わせることになるのよ。
どう説明したら良いの?
その時、澄佳さんはどんな気持ちをなさるかしら?」
宮緒は息を飲む。
「私たちの結婚はたくさんのひとを傷つけるかもしれないわ…」
「…由貴子…」
肩を落とした由貴子に触れようとした宮緒を、彼女は避けるように背を向けた。

「…私、自信がないわ。
この関係を受け入れて、貴方と幸せになる自信が…。
今の私には…ないわ…」

それは控えめではあったが、はっきりとした宮緒に対する拒絶の言葉であるかのようだった…。


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