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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
「由貴子さんの憂い貌もまたお美しいものですが、哀しげなお貌は似合わないですよ。
貴女は今、お幸せな新婚の筈です」
「…朱先生…」

隣の長椅子に腰掛けると、その象牙色のしなやかで美しい指先が由貴子の形の良い顎を摘まんだ。
…少しも性的なニュアンスを感じさせない優しくも清しい仕草であった。

「綺麗な奥様が、何を悩まれているのですか?」
「…それは…」
由貴子は言い澱み、俯く。
…いくら信頼しているとは言え、他人の朱に簡単には打ち明けられない話だ…。
朱はふっと息を吐くと、ゆるりと立ち上がった。
美しいシルエットの長袍の裾が揺れ、芳しい伽羅の薫りが微かに揺蕩う。

「…お話を伺う前に私が飛び切りの一杯差し上げましょう。
美味しいお茶はひとの心を落ち着かせ、平安を与えますからね」
振り返り、その切れ長の情緒を含んだ一重の眼差しで婉然と微笑んだ。
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