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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
「ミスターですか?
ミスターはただいま、東棟で重役会議中ですが…」
聞くが早いか、由貴子は素早く一礼するとそのままロビーの中央に進み、大階段に向かった。
彼女が通り過ぎたあと、ふわりと妙なる白檀の薫りが立ち昇る。
「奥様!」
慌てて声を掛けると由貴子が振り返り、まるで少女のように無垢に笑った。
「ごめんなさい。李さん。
今日だけは無作法をお許しくださいね」
改めて律儀に頭を下げて、そのまま大階段をしなやかに駆け上がる。
その美しい後ろ姿に見惚れながら、思わず苦笑する。
…そうなのだ。
恋とは向こう見ずで傍迷惑で無鉄砲なものなのだ。
それが恋なのだ。
濃密な恋をしているもの特有の煌めきや艶やかさを辺りに振りまきながら由貴子は大階段を登りきり、李の視界から霞のように消えた。
「…このあとのミスターのスケジュール調整をしなくてはね。忙しいこと」
ミズ・李は肩を聳やかしながらも少しも嫌ではないように片頬で小さく笑いながら、オフィスに向かったのだった。
ミスターはただいま、東棟で重役会議中ですが…」
聞くが早いか、由貴子は素早く一礼するとそのままロビーの中央に進み、大階段に向かった。
彼女が通り過ぎたあと、ふわりと妙なる白檀の薫りが立ち昇る。
「奥様!」
慌てて声を掛けると由貴子が振り返り、まるで少女のように無垢に笑った。
「ごめんなさい。李さん。
今日だけは無作法をお許しくださいね」
改めて律儀に頭を下げて、そのまま大階段をしなやかに駆け上がる。
その美しい後ろ姿に見惚れながら、思わず苦笑する。
…そうなのだ。
恋とは向こう見ずで傍迷惑で無鉄砲なものなのだ。
それが恋なのだ。
濃密な恋をしているもの特有の煌めきや艶やかさを辺りに振りまきながら由貴子は大階段を登りきり、李の視界から霞のように消えた。
「…このあとのミスターのスケジュール調整をしなくてはね。忙しいこと」
ミズ・李は肩を聳やかしながらも少しも嫌ではないように片頬で小さく笑いながら、オフィスに向かったのだった。