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星逢いの灯台守
第5章 星逢いの灯台守
「…柊司さん。こんなこと…私が言い出してお気を悪くなさらないで」
それまで黙りこくっていた澄佳が控えめに口を開いた。
「しないよ、澄佳。
なんでも話してくれ」
「…宮緒さんは人間的にも素晴らしい方です。
お優しくて抱擁力があって穏やかで理知的で真面目で…。
お仕事にも熱心で、裏表なくあらゆることに情熱を注がれます。
今では上海のホテルの支配人でいらっしゃるそうです。
そのホテルも大成功して…。
ですから、由貴子さんは必ずお幸せになると思います。
瑠璃子ちゃんもきっと理解なさるわ。
私に免じて、お二人の結婚を許して差し上げていただけませんか?」
「…澄佳…」
澄佳のほっそりとした白い手が思いやりの仕草で柊司の手に重ねられる。
おとなしやかで優しい澄佳は、今日の出来事にどれだけ動揺したことだろう。
そんな中、澄佳がかつて密かに想いを寄せた男を取りなすことは、大変な勇気が要ったことだろう。
…自分は澄佳にこんなにも気を遣わせてしまっているのかと、胸が痛む。

「…澄佳…」
その小さく華奢な白い手を握り返す。
「…そうだね。
君がそう言うならきっと宮緒さんは素晴らしいひとなのだろう。
…それに、母様が選んだ方だ。
良い方に違いないね。
…僕が言いすぎたよ」
…澄佳の優しさを台無しにしてはならない。
柊司は決意を固めた。

やや硬い表情のまま、柊司は宮緒に頭を下げた。
「…宮緒さん。先ほどは大変失礼なことを申しました。
お許しください。
母の人生は母のものです。
私が差し出がましいことを申すような事柄ではありませんでした。
…母をよろしくお願いいたします」

頭を上げたとき、由貴子の涙で光る美しい瞳と眼が合い、柊司はようやく小さな微笑みを浮かべたのだった。


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