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星逢いの灯台守
第5章 星逢いの灯台守
「…何を考えていらっしゃるの?」
由貴子が柊司の貌を覗き込む。

ひやりと初冬の寒さを含む潮風が頰を撫で…ここはあのリラの咲く庭ではないのだと気づかされる。
「…昔のことです。
…母様に出会った日のことを…」

…庭のリラの花に白い手を伸ばした由貴子に、柊司は恋をしたのだと思う。
初めての甘く切ない恋を…。
…決して実らぬ禁断の恋を…。

二人の瞳が合い、暫し見つめ合う。
…束の間のような、永遠のような時間が過ぎる。

「…私もあの日、貴方に恋をしたのよ…。
貴方のお母様になりたかった…。
貴方の特別なひとになりたかった…」
…願いは叶ったわ…。
ありがとう…。
由貴子の囁きが風に乗って柊司の耳に届く。

…潮風によって乱された艶やかな由貴子の髪を、直すために手を伸ばし…そのまま貌を近づける。

甘い吐息に惹き寄せられるように唇を近づけ…そっと慈しみだけのキスを与えた。

「…僕の方こそ、ありがとう…」
…大好きな僕の母様…。

由貴子はあの日のリラの花のように、優しさだけの色彩に彩られた微笑みを浮かべ、その美しい瞳を閉じた。

…それはそのまま、永遠の初恋の決別へのキスとなった。

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