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星逢いの灯台守
第5章 星逢いの灯台守
「…いやだわ。少し酔ったのかしら…」

由貴子が白い頰に両手を当て、恥じらうような仕草をした。
…そのややしどけなくさえ映るしなには、匂い立つような上質な色香が感じられ、見慣れた宮緒ですらどきりとしてしまう。
「由貴子さん、海辺を散歩して来ましょうか。
…少し、潮風に当たってきます。そのうち酔いも覚めるでしょう」
食堂の同じテーブルでまだワインを傾けている柊司と澄佳に告げる。

「それがいいわ。
今夜は満月よ。星もたくさん出ているから、迷子にもならないわ」
澄佳はそう答えると、柊司の肩に甘えた仕草でもたれかかった。
…彼女も少し酔っているようだ。

…瑠璃子は部活の早朝練習のために、とっくに部屋に引き上げていた。
もっとも、部屋で何をしているかまでは分からない。

…恐らくは先ほど散々聞かされた「大好きな涼ちゃん」にLINEを送りつけているのだろうが…。

…「涼ちゃんは冷たいんだよ。
私がどんなに大好き!て告っても、ちっとも相手にしてくれないの。
俺は青臭いガキは趣味じゃねえんだよって知らん顔。
ひどいと思わない?宮緒さん。
…ねえ。私ってブス?可愛くない?」
拗ねたように…けれど少し哀しげにしょんぼりと尋ねられ、思わず破顔してしまった。

「とんでもありません。
瑠璃子さんはとてもお可愛らしいですよ。
…お母様に本当に良く似て、美人でいらっしゃる…」
正直に答えただけなのに、瑠璃子はにやりと笑って囃し立てた。
「盛大なノロケキタ〜!
宮緒さんて、本当にママにメロメロなんだね」
…そうして、わざとため息をついてみせた。

「…いいなあ、ママは…。
私も涼ちゃんにそんな風に夢中になってほしいなあ…」
…恋する少女の悩みは尽きないようだった。


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