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星逢いの灯台守
第5章 星逢いの灯台守
「…星逢いの灯台守?」
「…うん。
昔々、内房の海の小さな村の話だそうだ」
…そう言って遥か遠く…群青色より尚黒々とした夜の帳の色を映す海を見つめた。

…こんな初冬のある夜、幼い宮緒は珍しく母に散歩に連れ出された。
「風邪引かんようにマフラーもするんよ」
宮緒に分厚いオーバーを着せながら母は言った。
…そう言う母は紬の着物にショールを巻きつけただけだ。

母が夜に外に出ることは珍しく、宮緒ははしゃいでいた。
「母さん、どこにいくの?」
「…星逢いの灯台を見に行くんよ。
さあ、おいで…」
母はその色の白さゆえに寂しげに見える面に微かな笑みを浮かべ、宮緒の手を引いた。
「ほしあいの灯台?
のざき灯台でしょ?」
…宮緒の家から少し歩いた先にある岸壁の突端に聳える野崎灯台…。
この辺りに住む者には馴染みの灯台だ。
なぜ星逢いの灯台なんて言うんだろう。
宮緒は不思議だった。
母は曖昧に笑い、答えなかった。

「…ああ、今夜は沖に船がようけ出とるんやねえ…。
烏賊釣り漁船やろうか…。
…灯台さんの灯りに照らされてきらきら輝いとるわ…綺麗やねえ…」
母はまるで少女のように嬉しげに声を上げた。

灯台が見上げられる浜辺に宮緒を座らせ、家から持参した魔法瓶に入った温かなココアを飲ませてくれた。
…初めて外で飲むココアは温かくて甘くて頬っぺたが落ちるほど美味しかった。

「夜のピクニックだね、母さん」
嬉しさからにこにこ笑う宮緒を優しげに見つめる。
「…そうやね。夜のピクニックやね」

…そうして、ぽつりぽつりと唄うような声で、母は昔話を語り始めたのだ。

「…昔々、ある海の村に逞しい船乗りの若者と、美しい若い娘がおりました…」
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