この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
星逢いの灯台守
第5章 星逢いの灯台守
「…二人は恋人同士でした。
けれど、二人の家は大変に貧しくて、両親から結婚を反対されておりました。
特に若者の家は貧乏で、漁に出る船もありませんでした」
「…え?かわいそう…
お船がなかったらお魚とれないね」
宮緒の周りの漁師は皆、大なり小なり自分の漁船を持っていたからだ。

母は宮緒のマフラーを直してやる。
「…でもね、その若者は少しも惨めな様子もなくいつも笑顔で明るく元気に仲間の船で漁に励んでいました。
若者はその村のだれよりも漁が上手でたくさんの魚を釣り上げ、毎日のように大漁旗を掲げて港に帰って来るのでした。
…そんな若者が娘は大好きでした。
仲を反対されていた二人は密かに会うことしかできませんでした。
…夜遅く…皆が寝静まったあと、星明かりとこの灯台の灯りを頼りにこの浜辺で…」

母が遠くの海を見つめる。
闇夜に支配された海は、その境界線すら朧げだ。
烏賊釣り漁船が夢のようにその灯りをちらちらと瞬かせる様子は、まさに水面に浮かぶ星のようだった。

「…二人は結婚の約束をしました。
若者は、今度の漁で必ず大物を釣り上げる。
そうしてその魚を娘の両親に捧げて結婚を認めてもらうと言いました。
…みたことがないくらいにでかい獲物と大漁旗と…俺は一緒に、帰ってくる。
…必ずちづるのもとに帰ってくる…。
…だから、この灯台で待っていてくれ…。
そう太陽のように笑って、若者は仲間の船に乗り込みました」

…あれ?…と、宮緒は訝しんだ。
ちづる…て、母さんの名前といっしょだ…。
けれど、問いかけるのもはばかられるほどに、母はその物語の中に入り込んでしまったかのような不思議な表情で海を見つめ続けていた。

「…けれどその日、季節外れの突然の台風が発生して、嵐のように海は荒れ狂い、漁船は一隻も村に帰っては来ませんでした」
淡々とした密やかな母の声が聞こえた。

「…娘は毎日毎日、この灯台にやってきて若者を待ち続けました。
けれども若者は二度とその姿を見せることはありませんでした。
…周りの村人が諦める中、娘はただ一人若者の無事を信じて祈り続け、待ち続けました。
…毎日…毎晩…この灯台の下で…」



/198ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ