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星逢いの灯台守
第5章 星逢いの灯台守
「…ある夜のこと娘は秘かに梯子を伝って灯台に上がり、そっと灯りを灯しました。
…本当は禁止されていたことだけれど…。
灯台の灯りがあれば、いつか若者がその灯りを頼りにこの浜辺に…この村に帰ってこられる…。
そう信じて…思い続けて…毎晩…毎晩…灯台の灯りを灯し続けました」

「…それで…若者と娘は、どうなったの…?」
話に惹き込まれた宮緒は、恐る恐る尋ねる。

母の白い横顔が哀しげに息を吐く。
「…若者はとうとう帰っては来ませんでした…。
そうして娘は、貧しい家と家族を助けるために村の有力者の元にお嫁に行ってしまいました。
…娘は今では、若者が帰って来なければいいと思っているのです」
…とてもとても哀しそうな母の声…。

「どうして?
若者をあんなに待っていたのに?」
「…娘は今の変わってしまった自分を見られたくないんよ…。
…お金のために結婚し…若者を裏切った醜い自分の姿を…」
母の黒い瞳から、涙が静かに滴り落ちた。
「…帰って来たとしても…もう永遠に会えんのよ…。
あたしは変わってしもたもん…」
「…母さん…」
…どうしよう…母さんが泣いている…。
宮緒は自分まで泣きたくなった。
必死で勇気を振り絞り、母の腕を掴む。
「会えるよ!いつか会えるよ!
その娘は何も悪くないじゃないか!
ちゃんと待っていたんじゃないか!
織姫と彦星だって会えたんだよ!
一年に一回だけだけど、神様が会わせてくれたんじゃないか。
だから会える…いつかきっと会える!」

母が驚いたように宮緒を見下ろし、泣き笑いの表情を浮かべて抱きしめた。
「…ありがとね…真紘…。
あんたはほんまに優しい子やね…。
…あんたは母さんの宝物や…」
母の温かな涙が、縋り付く宮緒の小さな手に静かに落ちる。
…いっぱいいっぱい泣いて…母さんの涙が枯れてしまえばいいのに…。
そうすれば、母さんはもう泣かなくて済むのに…。
遣る瀬無い気持ちで、母の背中を抱き返す。

…ややあって、母は夜の海を振り返った。
烏賊釣り漁船の灯りはまだちかちかと瞬いていた。

「…今夜は、あのひとの命日やったんよ…」

そうして、ゆっくりと岸壁の灯台を振り仰いだ。
「…この灯りは、天国も照らしているんやろうか…」




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