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星逢いの灯台守
第2章 忘れ得ぬひと
兄は今、あの小さな海の町のリゾート開発に向けて、かかりっきりで仕事を進めていた。
その町の片岡が所有している旅館に連日泊まり込み、東京の住まいには殆ど帰っていなかった。

宮緒は主に、東京のオフィスで事務方を担当している。
片岡のリゾート開発以外の仕事を代行していたから、眼が回るほどに忙しかった。
だから、内房のあの小さな町に足を向けることはまだない。

「…美人…ですか…」
…あんな寂れた小さな町に、兄の目を惹くような美人がいたのかと、少し驚く。
片岡は女を見る眼が肥えている。
ちょっとやそっとの美人では賛美したりしないし、もちろん食指も動かさない。

宮緒は興味を持った。
「どんなひとですか?」
片岡は宮緒が淹れたコーヒーを美味そうに一口飲むと、小さく思い出し笑いをした。
珍しい仕草に眼を見張る。

「…古びた小さな食堂の娘だ。
まだ二十歳の小娘…。
…地味な服を着て、垢抜けなくて、受け答えも無愛想で…」

…でも…
と、感に耐えたように呟いた。
「…息が止まるほどに綺麗な娘だった。
あんなに美しい娘は見たことがない。
…自分が醜いんじゃないかと焦るほどにな…」
兄の眼が眩しげに細められる。

最大の賛美…その上、大変な熱の入れようだ。
また、自分に絶大な自信を持つ片岡の言葉とは思えなかった。
そして、そんな自分に戸惑っているようにも見えた。
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