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星逢いの灯台守
第2章 忘れ得ぬひと
兄の新しい恋人…澄佳を見た時、宮緒は息を呑んだ。
…確かに、兄が言った通りの眼が覚めるような美しい…しかし簡単な言葉では形容しがたい特別な侵し難い雰囲気の漂う娘だったのだ。
「…小川澄佳です。あの…。
よろしくお願いします」
透き通るような白い肌、優しい三日月形の眉、長く濃い烟るような睫毛、黒目勝ちな大きな濡れた瞳、すんなりと整った鼻筋、形の良い紅い唇…。
少女と見紛うばかりの華奢なか細い身体…。
兄が惹きつけられるのも頷ける稀有な美人であった。
…分けても彼女から漂うしっとりとしたどこか儚げな…嫋嫋とした雰囲気は、宮緒の心の琴線に触れた。
…兄さんは、さすがだな…。
同時に、今までの兄の恋人たちとは真逆のタイプだったので、大変な驚きを覚えたのだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします。
秘書の宮緒です」
…弟とは名乗らない。
片岡の秘書になってから、宮緒は会社では兄弟ということを伏せていた。
二人の関係を知るのは、古くからいる従業員だけだ。
安心させるように笑いかけると、澄佳はほっと表情を和らげた。
…片岡は仕事のために出社していた。
初めての東京、初めてのマンション、そして見知らぬ男と二人きりにされ、さぞかし緊張していたに違いない。
「澄佳さんの身の回りのお世話をするように申し仕っております。
何でもご遠慮なく仰ってください」
穏やかに告げると、澄佳は素直に頷いた。
…買い出ししたものを収納しながら、彼女は無邪気に尋ねた。
「…広いマンションですね。
こんな広いところに片岡さんはお一人で住まわれているんですか?
あまり使われていないですね…」
宮緒の手が止まる。
…兄さんは…結婚していることを告げてないのか…?
愕然とする。
「…投資用に買われたのでしょう。
社長はご多忙で、あまりここにはいらっしゃいませんし…」
「そうなんですね」
澄佳は屈託無く頷いた。
…嘘だ。
ここは本当は兄と麻季子が暮らすために片岡の父親が買い与えたものだった。
けれど、二人の結婚は事実上破綻し、麻季子は成城の実家に未だ住んでいる。
ここには足を踏み入れたこともない。
キッチンから弾んだ声が聞こえた。
「…あ、オール電化キッチンだわ!
私、オール電化、初めてなんです。
試しに使ってみたいから、宮緒さん。毒味して行ってください」
無邪気に笑う澄佳に心が痛んだ。
…確かに、兄が言った通りの眼が覚めるような美しい…しかし簡単な言葉では形容しがたい特別な侵し難い雰囲気の漂う娘だったのだ。
「…小川澄佳です。あの…。
よろしくお願いします」
透き通るような白い肌、優しい三日月形の眉、長く濃い烟るような睫毛、黒目勝ちな大きな濡れた瞳、すんなりと整った鼻筋、形の良い紅い唇…。
少女と見紛うばかりの華奢なか細い身体…。
兄が惹きつけられるのも頷ける稀有な美人であった。
…分けても彼女から漂うしっとりとしたどこか儚げな…嫋嫋とした雰囲気は、宮緒の心の琴線に触れた。
…兄さんは、さすがだな…。
同時に、今までの兄の恋人たちとは真逆のタイプだったので、大変な驚きを覚えたのだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします。
秘書の宮緒です」
…弟とは名乗らない。
片岡の秘書になってから、宮緒は会社では兄弟ということを伏せていた。
二人の関係を知るのは、古くからいる従業員だけだ。
安心させるように笑いかけると、澄佳はほっと表情を和らげた。
…片岡は仕事のために出社していた。
初めての東京、初めてのマンション、そして見知らぬ男と二人きりにされ、さぞかし緊張していたに違いない。
「澄佳さんの身の回りのお世話をするように申し仕っております。
何でもご遠慮なく仰ってください」
穏やかに告げると、澄佳は素直に頷いた。
…買い出ししたものを収納しながら、彼女は無邪気に尋ねた。
「…広いマンションですね。
こんな広いところに片岡さんはお一人で住まわれているんですか?
あまり使われていないですね…」
宮緒の手が止まる。
…兄さんは…結婚していることを告げてないのか…?
愕然とする。
「…投資用に買われたのでしょう。
社長はご多忙で、あまりここにはいらっしゃいませんし…」
「そうなんですね」
澄佳は屈託無く頷いた。
…嘘だ。
ここは本当は兄と麻季子が暮らすために片岡の父親が買い与えたものだった。
けれど、二人の結婚は事実上破綻し、麻季子は成城の実家に未だ住んでいる。
ここには足を踏み入れたこともない。
キッチンから弾んだ声が聞こえた。
「…あ、オール電化キッチンだわ!
私、オール電化、初めてなんです。
試しに使ってみたいから、宮緒さん。毒味して行ってください」
無邪気に笑う澄佳に心が痛んだ。