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星逢いの灯台守
第2章 忘れ得ぬひと
「昨日は澄佳が世話になったな。
お前がとても親切にしてくれたと喜んでいた。
すごくハンサムなひとだ…ともね。
お前も隅に置けないな」
宮緒が東京のオフィスに戻ると、片岡が機嫌の良い表情でデスクに座っていた。
硝子張りのパーテーションで仕切られた社長室…。
外から見えるが声は聞こえない。
宮緒はやや硬い表情で口を開いた。
「…社長。あの…澄佳さんには社長がご結婚なさっていることを…」
「言っていない。言う必要がないからな」
眉ひとつ動かさずに答える。
思わず反論する。
「そうでしょうか?
…澄佳さんは今まで社長がお付き合いされてきた方々とは違います。
とても純粋で繊細な方です。
もし、社長に奥様がいらっしゃることが分かったら、きっと傷つかれます。
そうなる前に社長からお話になった方が…」
「宮緒」
不意に冷ややかな声が飛んだ。
片岡は普段は真紘と呼ぶ。
「俺が既婚者と告げるか告げないかは俺の問題だ。
お前が口を挟むことではない」
有無を言わさぬ冷たい言葉であった。
「…しかし…!」
片岡が立ち上がり、ゆっくりと宮緒に近づく。
「…お前、澄佳に惚れたのか?」
怒りの表情ではない。
どこか面白がっているような色が、その冷淡な眼には浮かんでいた。
「いえ。もちろん違います」
…昨日、会ったばかりだ。
兄の恋人だ。
好きになる訳がない。
「そうか。良かった。
…お前は敵に回したくないからな」
愉快そうに笑い、宮緒の肩に手を置いた。
…そうして、通りすがりに告げた。
「明日、あの海の町に行ってくれ。
澄佳の祖母に会って、今回の件の説明をして来て欲しい。
…いきなり攫って来てしまったからな。
騒がれると困る。
澄佳のことは、俺が責任を持って幸せにする…とな」
…頼んだぞ、真紘…。
お前を頼りにしているよ…。
そう甘やかに囁くと、片岡は社長室を後にした。
お前がとても親切にしてくれたと喜んでいた。
すごくハンサムなひとだ…ともね。
お前も隅に置けないな」
宮緒が東京のオフィスに戻ると、片岡が機嫌の良い表情でデスクに座っていた。
硝子張りのパーテーションで仕切られた社長室…。
外から見えるが声は聞こえない。
宮緒はやや硬い表情で口を開いた。
「…社長。あの…澄佳さんには社長がご結婚なさっていることを…」
「言っていない。言う必要がないからな」
眉ひとつ動かさずに答える。
思わず反論する。
「そうでしょうか?
…澄佳さんは今まで社長がお付き合いされてきた方々とは違います。
とても純粋で繊細な方です。
もし、社長に奥様がいらっしゃることが分かったら、きっと傷つかれます。
そうなる前に社長からお話になった方が…」
「宮緒」
不意に冷ややかな声が飛んだ。
片岡は普段は真紘と呼ぶ。
「俺が既婚者と告げるか告げないかは俺の問題だ。
お前が口を挟むことではない」
有無を言わさぬ冷たい言葉であった。
「…しかし…!」
片岡が立ち上がり、ゆっくりと宮緒に近づく。
「…お前、澄佳に惚れたのか?」
怒りの表情ではない。
どこか面白がっているような色が、その冷淡な眼には浮かんでいた。
「いえ。もちろん違います」
…昨日、会ったばかりだ。
兄の恋人だ。
好きになる訳がない。
「そうか。良かった。
…お前は敵に回したくないからな」
愉快そうに笑い、宮緒の肩に手を置いた。
…そうして、通りすがりに告げた。
「明日、あの海の町に行ってくれ。
澄佳の祖母に会って、今回の件の説明をして来て欲しい。
…いきなり攫って来てしまったからな。
騒がれると困る。
澄佳のことは、俺が責任を持って幸せにする…とな」
…頼んだぞ、真紘…。
お前を頼りにしているよ…。
そう甘やかに囁くと、片岡は社長室を後にした。