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星逢いの灯台守
第2章 忘れ得ぬひと
イブの日、宮緒は片岡の急な呼び出しで銀座の高級ホテルに書類を受け取りに行った。

「済まないな。休みなのに」
ラグジュアリーなホテルのロビーで書類を受け渡しながら片岡はやや困惑した様子で告げた。
「別のファイルに紛れていた」
「いいえ。大丈夫です」

「…久しぶりね、宮緒。
元気だった?」
片岡の後ろから麻季子が現れた。
…黒いドレスに華やかな髪型、煌めくアクセサリーは極上のダイヤモンドだ。
「お久しぶりでございます。奥様」
相変わらずつんと澄ました冷たい美貌だ。
「今日は私の友達の披露宴パーティなの。
…イブなのに気が利かないこと。
でも出席しないわけにいかないから…直人さんは渋々来たのよね?」
皮肉めいた言葉を片岡にぶつける。
「いや、君には随分会っていなかったから、会えて嬉しいよ」
冷ややかな眼差しに取って付けたような笑顔…。

「本当に…心にもないことを淀みなく仰るのがお上手」
険を含んだ眼差しが片岡を見上げる。

「…恐れ入りますが、あちらでご友人様方がお待ちのようです」
さりげなく話題を逸らす。

麻季子が奥のティーラウンジを見遣り、ひらひらと手を振った。
「パーティまでの間、お茶でも飲みましょうと誘われているの。
…先に行っているわ。すぐにいらしてね」
「もちろんだ」

麻季子が滑るようにその場を離れたのを眼の端に捉えながら、片岡は眉を跳ね上げて見せる。
「相変わらず傲慢な女だ」
「…聞こえます。社長」
「先刻ご承知さ」
…不意に声を潜め
「…澄佳が一人で家にいる。
寂しがっているかもしれない。
帰りに様子を見に行ってやってくれ。俺の帰りは深夜になりそうだからな」
…こんな細やかな気配りをするのは澄佳にだけだ。
「…畏まりました」
一礼して行きかけて…
「…社長は澄佳さんには本当にお優しいですね」
去りかけた片岡が振り返る。
「…愛しているからな…。俺のガラにもなく」
やや照れたような…初めて見る新鮮な表情であった。
そのまま肩を竦め、奥のラウンジへと向かう。

すらりとした様子の良い後ろ姿を見送り、宮緒はため息を吐く。
…澄佳が大切にされているのは安心するが、二人の仲睦まじい様子を見聞きすると胸が少し痛むのだ。

宮緒は踏ん切りをつけるように頭を上げ、そのままホテルのエントランスに向かおうとする。

…その脚が、凍りついたように止まった。





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