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星逢いの灯台守
第2章 忘れ得ぬひと
澄佳は片岡夫婦と友人夫婦のテーブルの真後ろ…棕櫚の大きな植木を挟んだテーブルに身を潜めるようにして座っていた。
…恐らくそこからはテーブルの会話が手に取るように聞こえたのであろう。
遠目で見ても澄佳の清楚に整った貌が、見る見る内に蒼ざめるのが見て取れた。
…つまり、片岡と麻季子の夫婦関係が図らずも澄佳に知らしめられたのだ。
澄佳の華奢な肩が小刻みに震え始める。
宮緒は唇を噛み締めた。
…こんなところを、澄佳さんに目撃させたくはなかった…。
事実が分かるにしても、兄さんの口から伝えられて欲しかったのに…。
苦い思いを噛み締めていると、片岡夫婦と友人夫婦らが席から立ち上がり、ティーラウンジから去ろうとしていた。
紳士らしい仕草で、片岡が傍らの妻を優しくエスコートする。
そのスーパーモデルのように形良くシェイプされた腰に手を添えた。
…澄佳が片岡の後を追いかけるようにゆらりと立ち上がった。
宮緒は素早く澄佳に駆け寄り、その腕を強く引き留めた。
澄佳が蒼白い貌のまま、大きな瞳を見開いた。
「…宮緒さん…?」
「…こちらへ、澄佳さん…」
そっと囁き、隅へと誘おうとする。
「…離して…行かせて…」
澄佳がもがく。
「離しません。貴女をこれ以上傷つける訳にはいきません」
宮緒の表情と言葉から全てを察知した澄佳は、美しい瞳で睨みつける。
「…離して…!
貴方は…何もかも知っていたのね…?
…何もかも知っていて…私を…騙して…!」
周りの客たちが宮緒たちに注目し始める。
宮緒は澄佳のほっそりとした腕を引き寄せ、華奢な身体を胸元に抱き込んだ。
「…澄佳さん…」
「嘘つき…嘘つき…嘘つき…!」
澄佳のか細い拳が宮緒の胸を力無く打ち続ける。
「…嘘つき…嘘つき…!」
「…澄佳さん…!」
強く抱きしめ、周りの視線から澄佳を守る。
澄佳の身体から力が抜ける。
宮緒の腕の中で、彼女は声を押し殺して泣き始めた。
…甘やかな花のような薫り…。
こんな時ですら、この美しいひとは自分を酔わせるのだ…。
宮緒はその儚げな身体を、愛おしむように抱きしめ続けた。
…恐らくそこからはテーブルの会話が手に取るように聞こえたのであろう。
遠目で見ても澄佳の清楚に整った貌が、見る見る内に蒼ざめるのが見て取れた。
…つまり、片岡と麻季子の夫婦関係が図らずも澄佳に知らしめられたのだ。
澄佳の華奢な肩が小刻みに震え始める。
宮緒は唇を噛み締めた。
…こんなところを、澄佳さんに目撃させたくはなかった…。
事実が分かるにしても、兄さんの口から伝えられて欲しかったのに…。
苦い思いを噛み締めていると、片岡夫婦と友人夫婦らが席から立ち上がり、ティーラウンジから去ろうとしていた。
紳士らしい仕草で、片岡が傍らの妻を優しくエスコートする。
そのスーパーモデルのように形良くシェイプされた腰に手を添えた。
…澄佳が片岡の後を追いかけるようにゆらりと立ち上がった。
宮緒は素早く澄佳に駆け寄り、その腕を強く引き留めた。
澄佳が蒼白い貌のまま、大きな瞳を見開いた。
「…宮緒さん…?」
「…こちらへ、澄佳さん…」
そっと囁き、隅へと誘おうとする。
「…離して…行かせて…」
澄佳がもがく。
「離しません。貴女をこれ以上傷つける訳にはいきません」
宮緒の表情と言葉から全てを察知した澄佳は、美しい瞳で睨みつける。
「…離して…!
貴方は…何もかも知っていたのね…?
…何もかも知っていて…私を…騙して…!」
周りの客たちが宮緒たちに注目し始める。
宮緒は澄佳のほっそりとした腕を引き寄せ、華奢な身体を胸元に抱き込んだ。
「…澄佳さん…」
「嘘つき…嘘つき…嘘つき…!」
澄佳のか細い拳が宮緒の胸を力無く打ち続ける。
「…嘘つき…嘘つき…!」
「…澄佳さん…!」
強く抱きしめ、周りの視線から澄佳を守る。
澄佳の身体から力が抜ける。
宮緒の腕の中で、彼女は声を押し殺して泣き始めた。
…甘やかな花のような薫り…。
こんな時ですら、この美しいひとは自分を酔わせるのだ…。
宮緒はその儚げな身体を、愛おしむように抱きしめ続けた。