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星逢いの灯台守
第2章 忘れ得ぬひと
宮緒は自宅マンションに帰宅し、どさりとソファに腰を下ろした。
深く苦しいため息を吐く。

…澄佳のショックは想像以上に大きく深いものであった。
マンションに送り、落ち着かせるように温かいお茶を飲ませた。

宮緒は慎重に出来る限りの説明をした。
…片岡の妻とはずっと別居状態であること、片岡は澄佳を真剣に愛していること…。
しかし、澄佳は一言も口をきかなかった。

「…どうぞ社長とじっくりお話し合いになられてください。
くれぐれも思いつめたりなさいませんように…」

部屋を出ようとした刹那、澄佳は小さな声で呟いた。
「…私は…愛人だったのね…」

…愛人…。
その言葉が宮緒の胸にずきりと突き刺さった。
母親の哀しげな横貌と声が蘇る…。

…父さんはここにはずっとおらんのよ…。
真紘…。旦那さんは、他にうちがあるんよ…。
…ごめんねえ…。

「…知らなかった…。私は…ずっと…知らなかった…。
愛人だったなんて…。
…私は…あのひとを信じて、愛していたのに…誰よりも…誰よりも…。
…でも、あのひとは違った…。
私に嘘をついて…騙して…!」
貌を覆って泣き放つ澄佳を思わず抱き竦めた。
「…泣かないで…澄佳さん。
…泣かないでください…!」
腕の中の傷つきやすい白い花の化身のようなひとを、強く強く搔き抱いた。


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