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星逢いの灯台守
第1章 名も知らぬ薔薇
初老の駅員がホームに現れた。
もうすぐ発車時刻だ。

「…母さんも、元気でね…」
母親のか細い指が離れる。
「…真紘…」
母親の瞳が泣き出しそうに歪んだ。

列車のベルが鳴り響いた。

…ごめんね…真紘…。
潮風に乗って、母親の哀しげな声が届いた。

ドアが閉まり、列車がゆっくりと動き出す。
つられて母親が小走りに走り出す。
「…真紘…!
…ごめんね…!」
小さな叫び声が宮緒の胸に、ずきりと突き刺さる。

「母さん…!」
…思わず立ち上がり、拳を握りしめる。

小柄な母親の姿はあっと言う間に小さくなり…やがてプラットホームとともに何も見えなくなった。

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