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星逢いの灯台守
第2章 忘れ得ぬひと
「…海の匂いがする…!」
車が三浦海岸に着くと澄佳は待ちきれない様子でドアを開け、深呼吸をした。
「…わあ…綺麗…!」
人気のない砂浜に二人並んで立ち、沖合いを見つめる。
冬の空気は澄み渡り、きらきらと清潔な光が紺碧の海を輝かせていた。
「…寒くない?澄佳さん」
宮緒は澄佳の肩をそっと抱き寄せた。
「ううん。大丈夫…」
澄佳が素直に宮緒の肩に頭を預ける。
「…海を見るのはあの町を出て以来だわ…。
以前は毎日見ていたのに…」
…片岡は別の秘書に密かに澄佳の監視を命じていた。
あの内房の町に帰ることも禁じていた。
素直な澄佳はそれを頑なに守っていたのだ。
…すべては片岡の自分に対する愛ゆえだと信じて…。
「…帰りたい?」
澄佳の艶やかな髪が風に踊り、宮緒の頰を擽る。
「…帰りたいけれど…帰れないわ…。
…あの町には…もう帰れない」
「どうして?」
「…だって…あの町のひとたちは私のことを知っているんでしょう…。
片岡さんの愛人だって…。
そんなところにもう帰る訳には行かないわ…」
寂しげな言葉が、澄佳の美しい唇から漏れた。
ひっそりと、息を潜めるように生きていた母親の面影が重なる。
…このひとに、そんな想いはさせたくない…。
宮緒は黙って澄佳を引き寄せた。
両手で小さな美しい貌を優しく包み込み、持ち上げる。
冬の太陽の光を湛える綺麗な瞳…。
じっと見つめ、囁く。
「…貴女が好きです…」
「…宮緒さ…」
残りの言葉は、静かな口づけに絡め取られ…二人の密やかな甘い吐息に変わった。
車が三浦海岸に着くと澄佳は待ちきれない様子でドアを開け、深呼吸をした。
「…わあ…綺麗…!」
人気のない砂浜に二人並んで立ち、沖合いを見つめる。
冬の空気は澄み渡り、きらきらと清潔な光が紺碧の海を輝かせていた。
「…寒くない?澄佳さん」
宮緒は澄佳の肩をそっと抱き寄せた。
「ううん。大丈夫…」
澄佳が素直に宮緒の肩に頭を預ける。
「…海を見るのはあの町を出て以来だわ…。
以前は毎日見ていたのに…」
…片岡は別の秘書に密かに澄佳の監視を命じていた。
あの内房の町に帰ることも禁じていた。
素直な澄佳はそれを頑なに守っていたのだ。
…すべては片岡の自分に対する愛ゆえだと信じて…。
「…帰りたい?」
澄佳の艶やかな髪が風に踊り、宮緒の頰を擽る。
「…帰りたいけれど…帰れないわ…。
…あの町には…もう帰れない」
「どうして?」
「…だって…あの町のひとたちは私のことを知っているんでしょう…。
片岡さんの愛人だって…。
そんなところにもう帰る訳には行かないわ…」
寂しげな言葉が、澄佳の美しい唇から漏れた。
ひっそりと、息を潜めるように生きていた母親の面影が重なる。
…このひとに、そんな想いはさせたくない…。
宮緒は黙って澄佳を引き寄せた。
両手で小さな美しい貌を優しく包み込み、持ち上げる。
冬の太陽の光を湛える綺麗な瞳…。
じっと見つめ、囁く。
「…貴女が好きです…」
「…宮緒さ…」
残りの言葉は、静かな口づけに絡め取られ…二人の密やかな甘い吐息に変わった。