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星逢いの灯台守
第2章 忘れ得ぬひと
その日二人は、本物の恋人同士のように仲睦まじく海辺のデートを楽しんだ。
まるで時間を惜しむかのように、笑い合い見つめ合い…握った手は片時も離さなかった。

昼食は海辺の浜焼きの店で賑やかに食べた。
海育ちの澄佳は手際よく蛤や海老や烏賊を焼いた。
「…浜焼きか…初めて食べる…」
ぽつりと呟いた宮緒に澄佳は目を見張った。
「本当に?あの町に浜焼きのお店はたくさんあるのに?」
冷たいビールを飲みながら寂しげに微笑った。
「…僕の母親はあまり外に出たがらなかったから…。
…それに僕は十二歳で横浜の寄宿学校に入ってしまったしね…」

澄佳はそっと微笑んだ。
「…私たち…あの町のどこかですれ違っていたかもしれないのにね…」
五つ歳下の澄佳は、宮緒が十二の時七歳だ。
…七歳の澄佳さんか…。
可愛いだろうな…。
宮緒はテーブルの上の白い手を握りしめる。
「すれ違っていたらきっと分かったよ。
…こんな可愛い子、気づかないはずがない」
「お上手ね。
私、小さな頃は真っ黒に日焼けして男の子みたいだったわ。
ショートカットで、一日中海で泳いでいた…」
「…見てみたかったな。男の子みたいな澄佳さんを…。
どんな貴女でも、きっと好きになっていた…」
網焼きの手を止め、澄佳は長い睫毛を瞬かせ遠くを見るような眼差しをした。
「…もし、あの町で…小さな頃に出会っていたら…」
「…僕は貴女に恋をしていた…。
貴女に夢中になっていたよ…」
「…七歳の男の子みたいな私でも?」
「…七歳の男の子みたいな澄佳さんでも…」
澄佳の白い手にそっと唇を寄せる。

「…私もよ…。
きっと貴方に恋をしたわ…。
貴方に夢中になっていたわ…」
澄佳の手が、宮緒の髪を優しく撫でる。
「…上手く行かないわね。恋って…」
潤んだ黒い瞳が笑い泣きの形に細められた。

宮緒が口を開きかけた時、網の上の蛤が熱に爆ぜて大きな音を立てた。
「わっ…!」
宮緒が驚き声を上げる。
澄佳は思わず吹き出し、笑い転げた。
「怖がりさんね!」
「いきなりだもの。そりゃ驚くさ」
やや憮然とする宮緒と眼が合い、二人は同時に笑い出した。
他の客がいないのをいいことに、盛大に笑い続ける。

…笑い納めに澄佳は目尻の涙を拭った。
「…こんなに笑ったの…久しぶり…」

…目の前の美しいひとへの愛おしさは、止めどなく溢れいでた…。






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