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星逢いの灯台守
第2章 忘れ得ぬひと
「…社長…。何を仰っているのですか?
社長はあんなに愛しておられた澄佳さんを捨てると仰るのですか?」
思わず語気荒く気色ばむ。
「いたいけな少女のような…まだ何もご存知ない澄佳さんをまるで攫うように連れてこられて…。
澄佳さんに故郷や家族や友人…すべてのものを棄てさせて…。
…澄佳さんは社長のために今まで一生懸命に尽くしてこられました。
澄佳さんは今も社長だけをずっと愛していらっしゃるのに…。
あんまりな仕打ちではありませんか?」
…澄佳の献身は陰からずっと見守っていた。
衣食住に渡り、澄佳は多忙な片岡を健気に支えきめ細やかな世話をし続けて来たのだ。
しかし、どれだけ支えてもすべての称賛は本妻の麻季子のものになる。
華やかな場所で片岡の妻として紹介されるのは麻季子ただ一人だ。
けれど澄佳は恨み言ひとつ言わない。
自分の立場と運命を粛々と受け入れ、片岡の為に生き続けてきたのだ。
…それを…!
片岡の冷ややかな眼差しが細められ、薄い唇に冷たい笑みが刷かれる。
「…俺だけをずっと…ね。
果たしてそうなのか?」
「…え?」
片岡は腕を組み、唇を歪ませる。
「澄佳が誰を愛しているか…。
それはお前が一番良く知っているのではないか?」
宮緒は思わず眼鏡越しの瞳を見張る。
「…社長…?」
身を預けていたデスクから宮緒へと歩みを進める。
「お前の澄佳への気持ちを、俺が気づかなかったとでも思うのか?」
…いや…。
と、可笑しそうに…朗らかと言っても良いような笑みを浮かべながら、片岡は宮緒に更に近づいた。
強い光を放つ眼差しが宮緒を捉える。
「…お前と澄佳が愛し合っていることを、俺が気づかなかったとでも思うのか?」
社長はあんなに愛しておられた澄佳さんを捨てると仰るのですか?」
思わず語気荒く気色ばむ。
「いたいけな少女のような…まだ何もご存知ない澄佳さんをまるで攫うように連れてこられて…。
澄佳さんに故郷や家族や友人…すべてのものを棄てさせて…。
…澄佳さんは社長のために今まで一生懸命に尽くしてこられました。
澄佳さんは今も社長だけをずっと愛していらっしゃるのに…。
あんまりな仕打ちではありませんか?」
…澄佳の献身は陰からずっと見守っていた。
衣食住に渡り、澄佳は多忙な片岡を健気に支えきめ細やかな世話をし続けて来たのだ。
しかし、どれだけ支えてもすべての称賛は本妻の麻季子のものになる。
華やかな場所で片岡の妻として紹介されるのは麻季子ただ一人だ。
けれど澄佳は恨み言ひとつ言わない。
自分の立場と運命を粛々と受け入れ、片岡の為に生き続けてきたのだ。
…それを…!
片岡の冷ややかな眼差しが細められ、薄い唇に冷たい笑みが刷かれる。
「…俺だけをずっと…ね。
果たしてそうなのか?」
「…え?」
片岡は腕を組み、唇を歪ませる。
「澄佳が誰を愛しているか…。
それはお前が一番良く知っているのではないか?」
宮緒は思わず眼鏡越しの瞳を見張る。
「…社長…?」
身を預けていたデスクから宮緒へと歩みを進める。
「お前の澄佳への気持ちを、俺が気づかなかったとでも思うのか?」
…いや…。
と、可笑しそうに…朗らかと言っても良いような笑みを浮かべながら、片岡は宮緒に更に近づいた。
強い光を放つ眼差しが宮緒を捉える。
「…お前と澄佳が愛し合っていることを、俺が気づかなかったとでも思うのか?」