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星逢いの灯台守
第2章 忘れ得ぬひと
澄佳は救急車で病院に運ばれ、事なきを得た。
麻季子は救急隊により警察に通報された。
そのまま傷害未遂の容疑で逮捕され、取り調べを受けた。

宮緒は澄佳に付き添っていた。
病院に駆けつけた片岡の貌には見たことがないほどの驚愕と…そして痛ましいまでの後悔の色があった。
「澄佳!大丈夫か!」
安定剤と睡眠剤で眠りについていた澄佳に取りすがるように語りかけた。
「社長…。
澄佳さんは無事です。
手を掛けられてすぐの発見でしたので、大事には至っておりません。
間も無く意識を取り戻すだろうと医師からの説明がありました」
片岡は大きく息を吐き、澄佳の手を取り握りしめた。
「…良かった…」
…そうしてゆっくりと傍らの宮緒を見上げ、
「お前が助けてくれたんだな…。
ありがとう。礼を言う」
頭を下げた。
「…いいえ。そんな…。
…間に合って、良かったです」
そうして、気掛かりなことを尋ねる。
「…あの…。麻季子さんは…」

片岡は警察の麻季子に対面し、こちらに駆け付けた。
麻季子の様子は宮緒も心配でならなかったのだ。
「…精神が異常に錯乱している。
取り調べに訳の分からないことばかり言っているので、精神科医が呼ばれたよ…」
片岡は頭を抱えた。
「…あんなに麻季子が苦しんでいるなんて、気づかなかった。
澄佳を殺そうとするほどに追い詰められていたなんて…。
すべては俺の責任だ」
…こんなにも憔悴しきった兄を見るのは初めてのことだった。
宮緒の胸が激しく痛んだ。
「…社長…」
片岡が宮緒の眼を真っ直ぐに見つめる。
「…俺は麻季子が元に戻るまで彼女に付き添う。
それが麻季子と澄佳にできる唯一の罪滅ぼしだと思う。
澄佳には、本当は俺が付いていてやりたい。
けれど、それはできない。
俺のせいで澄佳はこんな目に遭ってしまった…。
俺には彼女の側にいる資格はない。
だから宮緒…。
澄佳が元気になるまで…お前が側にいてやってくれ」
「…社長…」

片岡の眼差しが切なげに細められ、眠っている澄佳の髪を優しく撫でた。
「澄佳は、俺が惚れた唯一の女だ。
俺は彼女を全部自分のものにしたかった。
自分の理解の範疇を超えることは些細なことでも許せなかった。
…だから、お前と澄佳が密かに想いあっていることが許せなかった。
嫉妬したんだ。
…本当はあんな風に、綺麗に澄佳を愛してやりたかったんだ…」


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