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星逢いの灯台守
第1章 名も知らぬ薔薇
本妻の息子…宮緒の腹違いの兄だと言う片岡直人は、山手のカフェを待ち合わせに指定した。
「…チャイナローズ、チャイナローズ…」
…待ち合わせの店名をぶつぶつ呟きながら、懸命に探し当てる。
昨日、来たばかりでこの辺りの地理には明るくない。
宮緒はきょろきょろと周りを見渡しながら歩く。
…あった…!
小径を曲がると目の前に、その店は現れた。
まるでイギリスの小さなカントリーハウスのような洒落た洋館がそのままカフェになっていた。
前庭に色とりどりの見事な薔薇が咲き誇り、建物全体に蔓薔薇が蔦のように伝っている。
…さながら童話の世界の挿絵のようだった。
…「オープンテラスに座っているよ」
腹違いの兄…片岡直人は電話でそう言っていた。
蔓薔薇のアーチの下…テーブル席に一人の長躯の若い青年が長い脚を組んで悠然と座っていた。
青年はコーヒーを飲みながら、ノートパソコンを操っている。
やや長めの髪が額に掛かり、それを無造作に掻き上げていた。
冷たい印象を与えるほどに整った目鼻立ちは、ひとつも片岡の父に似てはいない。
…けれど、このひとだという直感が走った。
洗練されたクールな貌立ち、洒落たデザインの春物のジャケットとシャツ、細身のパンツ、明らかに高価そうな焦げ茶色の革靴はぴかぴかに磨き上げられている。
いかにも大人の大きな手に煙草を挟み、時折それをややアンニュイな動作で燻らせていた。
…このひとが…片岡直人さん…。
…僕の…兄さんなんだ…。
身体中に弾けるような驚きと…微かな喜びが走った。
宮緒の視線を感じたのか、青年がゆっくりと貌を上げた。
…その冷ややかに見える眼を細め笑い、手を挙げた。
「…やあ、来たな。弟」
「…チャイナローズ、チャイナローズ…」
…待ち合わせの店名をぶつぶつ呟きながら、懸命に探し当てる。
昨日、来たばかりでこの辺りの地理には明るくない。
宮緒はきょろきょろと周りを見渡しながら歩く。
…あった…!
小径を曲がると目の前に、その店は現れた。
まるでイギリスの小さなカントリーハウスのような洒落た洋館がそのままカフェになっていた。
前庭に色とりどりの見事な薔薇が咲き誇り、建物全体に蔓薔薇が蔦のように伝っている。
…さながら童話の世界の挿絵のようだった。
…「オープンテラスに座っているよ」
腹違いの兄…片岡直人は電話でそう言っていた。
蔓薔薇のアーチの下…テーブル席に一人の長躯の若い青年が長い脚を組んで悠然と座っていた。
青年はコーヒーを飲みながら、ノートパソコンを操っている。
やや長めの髪が額に掛かり、それを無造作に掻き上げていた。
冷たい印象を与えるほどに整った目鼻立ちは、ひとつも片岡の父に似てはいない。
…けれど、このひとだという直感が走った。
洗練されたクールな貌立ち、洒落たデザインの春物のジャケットとシャツ、細身のパンツ、明らかに高価そうな焦げ茶色の革靴はぴかぴかに磨き上げられている。
いかにも大人の大きな手に煙草を挟み、時折それをややアンニュイな動作で燻らせていた。
…このひとが…片岡直人さん…。
…僕の…兄さんなんだ…。
身体中に弾けるような驚きと…微かな喜びが走った。
宮緒の視線を感じたのか、青年がゆっくりと貌を上げた。
…その冷ややかに見える眼を細め笑い、手を挙げた。
「…やあ、来たな。弟」