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星逢いの灯台守
第1章 名も知らぬ薔薇
向かい合わせに座るように促され、宮緒は緊張したままぎこちなく椅子に座った。
「…あの…初めまして。宮緒真紘です」
こんなに緊張して名乗ったのは、生まれて初めてだった。
片岡はノートパソコンを畳むと、淡々と革のメニューを差し出した。
「片岡直人だ。
…好きなものを頼みなさい。
どうせ、明日からは寮の食事だろう?
…聖ヨハネ学院か。
友人が通っていたけど、食事は中世時代の修道院から変わってないんじゃないかてくらい粗末らしい。
…豆のスープにマッシュポテト、黒パン、金曜日にだけソーセージかアイスバインが出るってさ。
…休日はみんなこの辺りのカフェか山下町のレストランに駆け込むらしいぞ。
親父も酷いな。わざわざこんな規律が厳しい全寮制に遊びたい盛りの男の子を押し込んで…」
にやりと笑った貌に、宮緒への嫌悪感はまるでなかった。
宮緒は全身の力が抜けるほどに安心した。

「…いえ…。あの…父さ…片岡さんには良くしていただいています。
…こんな立派な私立に通えるなんて思っても見なかったです…」
…田舎の小さな海の町では地元の県立高校を卒業したら大抵はそのまま家業の漁師になる。
そうでない子どもは木更津に出て就職する。
…大学に進学する子どもは稀だ。
ましてや、中学から私学に通う子どもなど皆無だ。


…『真紘は賢いらしいな。
良い私学を見つけた。まだ間に合うから編入試験を受けて見ろ。
受かったら横浜の学校に通えるぞ』

片岡の父が差し出した学校のパンフレット…。
…まるでヨーロッパにあるようなクラシカルで荘厳な建物の写真…。
心が奪われた。
…それは、自由への入り口だった。

…あの小さな海の町でなければ、どこでも良かったのだ。
…あの母親の日陰の花のように湿った寂しげな眼差しが届かないところならば…。

「…ふうん…」
片岡はちらりと宮緒を見遣り、興味深げに見つめた。

片岡の長く綺麗な指が伸び、宮緒の顎を掴んだ。
軽く上向かせられ、宮緒は息を飲んだ。



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