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星逢いの灯台守
第3章 空蝉のひと
「…お母様…ですか?」
女は遠慮勝ちに尋ねた。
「…貴女に少し似ていたような気がして…。
いや、失礼いたしました。
貴女はまだお若いのに…」
…初めて会ったひとに母の面影を重ねるなんてどうかしてる…。

ふっと寂しげに…けれどどこか艶のある眼差しで女は微笑んだ。
「若くはありませんわ。
貴女よりきっとずっと歳上です」
宮緒は驚きに眼を見張る。
「そうは見えません。
僕と同じくらいか、少し歳下かと…いや、女性に歳を尋ねるなんて失礼なことはできませんが…」

生真面目に答える宮緒を可笑しそうに笑い…しみじみした口調で尋ねた。
「…お母様はお元気でいらっしゃいますの?」
「いいえ。大分前に亡くなりました」
「…そうですか…。それは失礼いたしました。
まだお若かったでしょうね…」
優しい…押し付けがましくない言葉に、つい口を開いてしまう。
「そうですね…。まだ四十を過ぎたばかりでした…。
何の親孝行もできなくて…今になって後悔ばかりです」

「…母親というものは、そんなことは気にしませんよ。
子どもが幸せなら、自分はどうなってもいいのです。
…だから、貴方がお幸せでいらっしゃることがお母様への一番のご供養ですわ」
「…そうでしょうか…」
「ええ…」
女は美しい瞳に優しい色を浮かべて頷いた。
その言葉は宮緒の心にじわりと温かく染み入るようだった。

…と、女は不意にはっとするほどに寂寥感に満ちた表情になり、ぽつりと呟いた。
「…でも…時々、ふと孤独になることがあります」
「…孤独…?」
苦笑しながら、女はほっそりとした首を振った。
「…こんなこと、初めてお会いした貴方にお話するようなことではありませんわ…」

宮緒は居住まいを正し、真摯に女を見つめた。
「話してください。
僕たちは田舎の小さな駅の待合室で…たまたまお会いした…見知らぬ者同士です。
…だからこそ話せることもあるのではないでしょうか?」

女は宮緒を瞬きもせずに見上げ…素直に頷いた。
「…そう…ですね。
では、電車が来るまで聞いてください。
…私には、娘がおります…。
主人は娘が小さな時分に亡くなりました…」

女はまるで密やかなお伽話を紐解くかのように、静かに語り始めたのだった。



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