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星逢いの灯台守
第3章 空蝉のひと
…女の口唇は柔らかく…そしてその身体は処女のように慄き、震えていた。
宮緒は女の腕を引っ張り、既に敷かれていた床の間の褥にやや荒々しく押し倒した。
「…あ…っ…」
女の身体が宮緒の腕の中で硬く強張る。
「…怖いの…?」
女は微かに頷いた。
「…何年ぶり?…男と寝るのは…」
「…十年以上…」
羞恥に白いうなじを薄桃色に染めながら、消え入りそうに答える。
「十年以上も、亡くなった旦那様に貞操を守っていたの?
…見上げた未亡人だ」
「…酷い…」
口惜しそうに…そして哀しげに宮緒を見上げる女を優しく宥めるように口づけを繰り返す。
「…褒めているんですよ。
…今時、直ぐに再婚してしまうひとが多いのに…。
貞淑な奥様だな…て。
…きっと、亡くなった旦那様に大切にされていたんでしょうね…。
…それとも…道ならぬ恋の息子さんに操を立てていたのかな…?」
…先ほど見た澄佳の夫の男らしく引き締まった…それでいて知的に整った貌が脳裏に浮かんだ。

…そんなに長い間、想い続けていたのか…。
胸の奥にちりりと小さく焼け付くような痛みを覚える。
その違和感を振り払おうと、わざと淫らに口づけを仕掛ける。

「…やめ…て…んんっ…」
言葉で…唇で嬲られ、女は静かに涙を流した。
「…泣かないで。
虐めるつもりはなかったんだ…。
ただ、貴女みたいな美しいひとが十年も孤閨を守っていたなんて…勿体ないな…て」
「…んっ…は…あ…ん…」
抗議しようとする口唇を嬲るように押し開き、口内の奥で縮こまっている舌を探り当て、大胆に絡める。
「…もっと舌を絡めて…そう…上手ですよ…」
「…んんっ…あ…ああ…」
健気に舌を絡め、宮緒の口づけに応えようとする女に愛おしさが湧き上がる。

宮緒は丹念に濃厚な口づけを繰り返しながら、女の名古屋帯を巧みに解いていった。

淡い柳色の綸子の帯揚げをするりと抜きながら、その透き通るように白い耳朶に囁いた。
「…さあ…貴女の身体を見せてください…」

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