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星逢いの灯台守
第3章 空蝉のひと
…さながら嵐のような濃密で激しい情交の一夜が明けた…。


清かな秋の朝の光が部屋に射し込んでいるのを瞼の裏に感じる。
宮緒は心地よい微睡みの中、無意識に褥に腕を伸ばし女を探した。

…直ぐそこに触れる筈の柔らかな白絹のような手触りの女の身体はどこにもなかった。
不意に意識が明確に覚醒し、はっと眼を開く。

…褥に女の姿は影も形もなかった。

宮緒は一糸纏わぬまま立ち上がり、ざっと床の間と座敷を探す。
…そこには、がらんと静まり返り、他所他所しいほどに整った空間があるだけだった。

…行った…のか…。

全身の力が脱力するような…今まで感じたことのない寒々しい虚無感に囚われる。

…ふと、乱れた褥に眼を遣り…釘付けになる。

枕の下…翡翠の簪が残されていた。

そっと手を伸ばし、大切に拾い上げる。
美しく高貴な翡翠はひやりと冷たく…昨夜の女の熱い体温は微塵も感じる取ることはできなかったのだ…。
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