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星逢いの灯台守
第3章 空蝉のひと
…女の住む住所はあっけないほどに容易く判明した。

澄佳の夫であり、女の義理の息子でもある清瀧柊司なる人物がなかなかに著名な英国文学の研究の第一人者であることが、女の所在を探す有力な手掛かりとなったのだ。
…尤も、宮緒はかつて片岡の命で興信所紛いの仕事をさせられたことが幾度かあり、その時の経験が密かに役に立ったのだが…。

…本当は澄佳に尋ねれば直ぐに判明したのだろうが、事の経緯を話すことは女の名誉にかけてできなかった。

宮緒はパソコンの画面上に映し出された女の情報を、愛おしげに眺めた。

…女の名前は、清瀧由貴子…。
本郷にある清瀧家に今は一人で暮らしている。
一人娘は海浜留学…とやらで澄佳の元に身を寄せ、海辺の学校に通っている。
由貴子は裏千家の茶道の師範代を持ち、自宅で茶道教室を開いている。
歳は44歳であった。
…女が年上のことをやたらに気にしていたのが、漸く分かった。

…僕より八つ年上か…。
そんな風には見えなかったな。
歳を知っても宮緒は全く落胆はしなかった。
ただ、女の…由貴子の瑞々しさと美しさに驚嘆しただけだった。

…だから…

…逢いたい…あの人に…。

画面に映る由貴子の画像を、熱い眼差しで見つめる。

裏千家公式の教師プロフィール画像なので、やや硬い表情をしている。
…しかし、黒々とした黒眼勝ちな…密かに咲く花のような淑やかな眼差しや、典雅な京雛のように整った美貌はあの日の由貴子の面影をそのまま映していた。

…でも僕は、僕だけに見せる彼女に逢いたい。
逢いたい…逢いたい…。

まるで思春期の少年のように、針の飛んだレコードの如く、その言葉だけが宮緒の胸の中をリフレインし続けたのだった…。



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