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星逢いの灯台守
第3章 空蝉のひと
「…僕には…恋を想い出になんか出来ません」
宮緒は由貴子を強く見つめながら苦しげに低く告げるとその白い手を握りしめた。
びくりと震えるその手を逃さないように両手で包み込み、愛おしげに頰に押し当てる。
…ひんやりとした上等の白絹のような手だ…。
幽かな白檀の薫りが、宮緒の胸を狂おしく締め付ける。

「貴女のことをこのまま美しい想い出なんかにしたくない。
想い出の美しい花なんか、僕はいらない。
僕が欲しいのは…!」

由貴子の極上の黒曜石のように美しい瞳が切なげに歪み…しかし直ぐにすべての感情を振り切るように、宮緒の手を振り払った。

「…こちらです。
小径が狭くなっておりますからお気をつけになって…」
…そのまま竹林が鬱蒼と茂る裏庭へと誘った。

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