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第4章 下賎の悦び
 線路を突き進む音に混じって、キーンと耳鳴りがしました。

私が……いえ、私達がいるこの車両と外界が遮断されたかのような……見えない膜を感じる耳鳴りでした。

 外は闇。その闇の中に照らされた明かりの下、私は女の顔に指先を伸ばしま
した。

 しかし頬に触れるかどうかの際どい距離で止め、彼女の周りで漂う空気を撫でました。

 この汚れきった私の手が、あどけない無垢な女に触れるのかと思うと、妙に快感を覚えて愉しくなったんです。この女を愛でるも犯すも私の自由であると思うと、なんだか哀れな人生を送る私に神が与えてくれた絶対空間のような気がいたしました。

 手をかざし、眠っている彼女を視姦するだけで股間が熱くなってきましたが、時間はあまりありません。この一時だからこそ味わえる、二度と有り得ないシチュエーション。この状況で出来ることはどんなことだろうと考えました。

 いくら熟睡しているとはいえ、普通に触れては起きる可能性がある。頬をなぞり、唇に触れたいが……それは危険だ。

 座席の後ろに立って、上からブラウスの中を覗くのはどうだろう。

 ……だめだ。一ミリも隙間がない。

 ああ……出来ることなら尻の下に手を入れて、その堅そうな尻を揉みしだきたい。でもそんなことをしたら大変なことになる……。

 私は座席を掴み、顔を女の首筋に近づけました。
 
 キスをしようとしたわけじゃない。匂いを嗅ぎたかったんです。

 起きないように、静かな挙動で鼻をヒクヒク。

 すると……気絶してしまいそうなほどにいい匂いが鼻孔をくすぐりました。化粧にまみれた薬品の臭いなどまるでなく、こう……なんていうか、頬ずりしたくなるような清潔感ある匂いだったんです。

 ……舐めたい。 

 私は女の首筋を見つめて、狂おしい衝動に駆られました。

 舐めて、吸って……開いた股から手を突っ込み、性器に指を擦りつけたい。しかし、どうやってもそれは無理。首筋に吸い付いた瞬間、女は目を覚まし、寄生虫の如く貼り付いたおっさんを見て悲鳴を上げることでしょう。
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