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獣に還る時
第1章 獣に還る時
 ……あの時、結局妻は朝起きても犯されたことに気づかなかった。強引な性交だった為に違和感があって当然なのだが、彼女の鈍くささには呆れる反面、ホッとした部分もあった。汚し、陵辱し、同意のないまま子が出来てしまったらどうしようと、素面に戻って後悔したものだ。


 だが、それらは全て杞憂に終わった。何の変化もなく、今に至っている。


 過去の情景を思い出し、鮮明な映像を振り返っていた夫はふと、己の股間に目をやった。


 トランクスがテントを張っていた。前ボタンを外すと、硬度百%の肉棒に支えられた亀頭が顔を出した。


 眠っている妻の性器に、亀頭を押し付ける場面がリピートされる。何年も前に味わった快楽を思い返す。


 ……妻は、もう眠ってしまっただろうか?


 外の大雨が、より一層強くなってきた。


 ……この轟音なら、大声を出されても外には漏れない。


 風呂上がりに眺めた妻の体を思い出す。薄いピンクのパジャマの下に隠れた女の体を。今や熟女の仲間入りとなった彼女だが、体はまだまだ女。


 ……久しぶりに、襲ってやるか……。


 夫は缶ビールを一気に飲み干して、空き缶を流し台に放った。


 雷鳴が轟いた。


 リビングの明かりを消したと同時に、稲光が寝室へ向かう夫の背中を照らした。

                                 了   
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