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不倫のはて
第8章 交差する時
水曜日の朝。
夫が家を出る時間だ。
「いってらっしゃい あなた。」
「・・・・・。」
夫から 返ってくる言葉はないし
目を合わすこともない。
夫とは
もう 心を通わすことは
無理なのかもしれない。
15年間も 欠かさず見送り続け
返ってきたことなんて一度も
なかった。
夫はプライドが高く
譲ることは 苦手だ。
妻として 家族として
愛情を伝えてきたつもりでも
わかりあえないのだろう。
もしかしたら 今日が最後かもしれない。
リビングでは
テレビの情報番組の
臨時ニュースが流れた。
『昨年夏
ホテルの部屋で絞殺死体で
発見された坂井亜矢さん 37歳の事件で
一緒にいた男性の ・・・コージさん27歳が
何らかの事情を知っていると見て
行方を追っています。』
美鈴を見送るため玄関に行き
美鈴が見えなくなるまで窓から見ていた。
そのため陽子の耳に入ることなく
ニュースは終わった。