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不倫のはて
第8章 交差する時


 
 一方直樹のほうは・・・・




 朝 テレビの情報番組で
臨時ニュースが流れた。
「あっ」
ニュースを見ると同時
唇を真一文字に固く結び
握った拳が震える。顔の 表情が凍りついた。



 直樹は 昨年夏
妻であった 坂井亜矢を 
サイトで知り合ったらしい
男に殺害された。

 あの日の朝が 目の奥に映る。
いつもと変わらない顔で
俺を送り出した。
「いってらっしゃい」
「あぁ」
俺は 昇進間近で
仕事だけしか考えてなかった。
俺達夫婦には 子供がいなかった。
亜矢はいつも一人だった。
食事も眠るときも

 結婚した当初は 寂しがって甘えたり
したこともあったが
そのうちに 甘えることもなくなり
俺は それをいいことに仕事に集中していた。
気がつけば
お互い好き勝手に
生活していた。


 亜矢を 見ていなかった。
口で何も言わなかったが
寂しかったんだと思う。
申し訳なかった。
亜矢 すまなかった・・・・・

 あの日 玄関で
別れた顔が 最後に見た顔だ。
笑顔でありながら
寂しそうな顔・・・
亜矢は 写真を撮られ
男に脅されていた。
お金も 取られていたようだ。
そうとう 怖かっただろう

 だが俺には相談出来なかった・・・・




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