この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第10章 甘い微熱と寂しさと
────「ん……。」
パチリ、目を開ける。
いつの間にか寝ちゃってたみたい。
窓の外を見れば、
星が見えるほどの薄暗い空模様が広がっていた。
寝る前はあんなに明るかったのに、
かなり時間が経ったのかな……って
……ん?
「ちょ、ちょっと待って、いま何時?!」
ガバッと上体を起こして置き時計の方を見ると、
短い針がちょうど8の数字を指していた。
その事実にサーッと顔が青くなる。
え、嘘でしょ、これやばくない?
だって仕事終わるの18時だもん。
もし白馬くんが来てたとしても
確実に寝過ごしちゃってるやつだよね??
まだ来てない可能性が無いわけじゃない。
けど、仕事の早い彼のことだ。
普通に定時で終わってるはず。
……だめだ、考えれば考えるほど
寝過ごしたパターンが濃厚になっていく……!
頭を抱えて「うぁぁあ」と
ひたすら自責の念に駆られていると、
────ピンポーン
軽快なチャイム音が部屋中に鳴り響いた。
────もしかして。
わずかな、わずかな期待がこみ上げてくる。
気だるい身体でベッドから起き上がり、
玄関の方へ向かった、
そのとき。
まさかの言葉が耳に飛び込んできた。
「宅配でーす。」
────はい、期待が灰になった(遠い目)
それでも身体を起こしてしまったので、
せっかくだから出ることにする。
にしても配達なんて頼んでたっけ。
配達と見せかけて宗教の勧誘とかだったらどうしよう。
「はーい、お疲れ様です……。」
ネガティブな思考が堂々巡りする中、
様子を伺うように恐る恐る玄関を開けると、
そこには。
「りんごとゼリーお届けに参りました〜
……なんつって。遅くなってごめんね先輩?」
今一番会いたくてたまらない人が
優しい笑顔で立っていた。
自分でも笑っちゃうほど嬉しくて、気が緩んじゃう。
そのまま倒れ込むようにして彼にぎゅっと抱きつくと、
彼はキョトンとしながらも私の頭を撫でてくれた。
「んー?どしたの先輩。」
「よかった……、寝過ごしてなかった……。」
あぁもう、なんでこんなに安心するんだろ。
聞き慣れた声とか体温とか。
全部心地よくてホッとする。