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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第10章 甘い微熱と寂しさと
「すげぇうなされてたから。なにか怖い夢でも見た?」
彼があやすように私の頭を撫でる。
……また、白馬くんに助けられた。
重たい身体をゆっくりと起こし、
ベッドから降りて彼に抱きつく。
さっきまであんなに怖かったのに、
彼の体温を感じるだけでこんなにも安心するなんて。
あぁ、離れたくない。
白馬くんの背中に回す腕の力が、自然と強まる。
その意図を汲み取ったのか、
彼は何も言わずに私をそっと抱きしめ返してくれた。
胸を満たす安堵感。
「……ありがと、助けてくれて。」
「?、よく分かんねぇけど、どういたしまして?」
全く検討がつかない様子。
夢でも私を助けてくれるとか、なんだか笑っちゃう。
────というか、それよりも。
「ねぇ、どうしてまだここにいるの……?」
だって、もう確実に帰らなきゃまずい時間帯なのに。
明日は仕事な上、
私の家から白馬くんの家までかなり距離がある。
彼に向けてそっと顔を上げると、
彼はさも当然かのように私に告げた。
「だって、帰って欲しくなさそうな顔してたから。」
……彼はどこまでも見透かしてくる。
さっき彼に「寂しい」とは言ったけど、
そこまで深刻に伝えてはいなかった。
むしろ、ちょっと茶化す感じ。
帰って欲しくなかったことがバレてて恥ずかしいとか。
そんなものより嬉しさがずっと勝っていて。
私は甘えるように、彼の胸元に顔をうずめた。
彼への気持ちが、どんどん膨れて止まらない。
「……そっか。私そんな顔してたんだ。」
「うん、今もそうだよ。行かないでって顔。」
彼の優しい声音と、私の頭を撫でる優しい手。
そして、彼のちょっと低めな体温。
それを感じれば感じるほど嬉しくて、
反対に寂しくもなっていく。
だって、どっちにしたって彼は帰っちゃうんだもん。
……さっき見た夢のせいもあるのかな。
これまでフタをしてきたはずの寂しさが、
ドッと溢れ出した。
好きで、寂しくて、帰って欲しくなくて。
どうしようもないほど、
ある一つの気持ちが溢れる。
……断るって決めてたはずなのにね。
もう強く、はっきりと思ってしまった。
────わたし、彼と同棲したい。