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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
「えっとね、最初金閣寺でそのあと清水寺。周辺に参道が沢山あるから、その辺ブラブラしても楽しいと思うよ。」
「ん、りょーかい。じゃあ行こっか。」
そう言いながら、白馬くんが私の背中を押してくる。
その後をついてくるように、
みんなも一緒に歩き出した。
チラリと後ろを振り返れば、
蛇塚さんとうさが距離を取りながらも並んで歩いていた。
よかった、ちゃんと治まったみたい。
さぁ、やっと楽しい旅行の始まりだ。
────「まぁ!ユイさんとても素敵ですわ!」
はい。
楽しい旅行ですが、もちろん予定通りにはいきません。
金閣寺に向かう途中、
蛇塚さんが着物レンタルしたいって言い出したの。
私はあんまり乗り気じゃなかったんだけど、
半ば強引に連れてこられてしまった。
「うん、ありがとう。蛇塚さんもすごく素敵だよ。」
私は白と紫の鮮やかな着物。
蛇塚さんは、おしゃれな赤い着物を身に纏っていた。
派手な衣装に負けない蛇塚さん、流石だね。
店員さんが最後の仕上げのように、
私たちの結われた髪と着物を丁寧に手直ししてくれた。
「お二人共、とてもお似合いでございます。外でお待ちになられてる殿方が驚かれますよ。」
店員さんが、ふふっと優しい笑みを浮かべる。
フリは驚いて褒めてくれそうだけど、
白馬くんはまたからかってきそうだな。
うさは無反応かも。
そんなことを思いながら蛇塚さんの方を見れば、
彼女は頬を赤く染めて、少し緊張した面持ちを見せていた。
……恋する乙女の表情。
「ありがとうございます。じゃあ蛇塚さん、行こっか。」
「えっ、ええ!参りましょうっ!」
彼女が声を裏返らせながら、いそいそと私についてくる。
二人でお店を出れば、
彼らが男子高校生のノリでフザケあっていた。
フリはお団子食べてるし、
うさは白馬くんにちょっかい仕掛けてる。
「みんな、待たせてごめんね。」
そう言葉をかけると、三人が動きを止め、
一斉にこちらを向いた。
一気に視線が集まってなんだか気恥ずかしい。
「Wow!ユイサンも華サンも綺麗デス!美しいデス!」
最初に口を開いたのはフリ。
私達に距離を詰めて、目をキラキラさせてる。