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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
────「ねぇ蛇塚さん、変なこと聞いてもいい?」
様々なお土産を吟味しながら、蛇塚さんに話しかける。
すごいね、八ツ橋ってこんなに種類があるものなんだ。
チョコに抹茶にいちごにゴマに……。
さすが本場、どれにしようかすごく迷う。
「ええ、お友達ですもの、遠慮なさらないで。」
蛇塚さんがフフッと笑いながら、
柔らかく答えてくれた。
……それなら、思い切って聞いてみてもいいかな。
「……その、蛇塚さんの好きな人ってうさだよね?」
「ひゃいっ?!」
彼女が肩をはねさせながら、
心底びっくりしたように私を見る。
声裏返ってるし、顔真っ赤だし。
うん、やっぱりそうなんだ。
「そっ、そそっ、そんなわけ……っ!」
彼女が両手を横に振って必死に否定する。
けど、私が生暖かい目で見てたからかな。
私の表情を見るなり、
彼女は顔をハッとさせ、観念したように顔を俯かせた。
「……そ、そうですわ……。……でも、わたくしは彼に嫌われているから、この恋が実ることはありませんの。」
「……え?」
彼女から告げられる
まさかの言葉に呆然とする。
嫌われてる?うさに?
……どういうことだろう。
確かにちょっとした暴言(?)は吐いてたけど。
彼の蛇塚さんへの対応を見る限り、
嫌われてるなんて答えはどうやっても出てこない。
女性が苦手な彼があんなに話せてるくらいだ。
むしろ、好かれてる気さえする。
私がひたすら疑問に満ち満ちた表情を浮かべていると、
それに気づいた蛇塚さんが小さく笑った。
「そんなに難しい事情ではありませんわ。ただ、思春期ならではの問題が今も続いていると申しますか……。」
彼女は視線を下に落として、
困ったような儚い笑みを浮かべる。
そして、とても静かに落ち着いた口調で
蛇塚さんは私に言った。
「……わたくしの恥ずかしい子供時代のお話、よかったら聞いてくださる?
兎ともお知り合いのユイさんになら、お話ししても良いのかもしれない。」
……そう話す彼女の面影に、普段のお嬢様らしさは無くて。
ただそこにいるのは、
切ない恋に焦がれる
けなげな少女の姿だった。