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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
────蛇塚サイド────
みなさま、ごきげんよう。
わたくしの視点は初めてね。
少し緊張するけど、どうぞお手柔らかに。
────これは幼稚園の頃。
「おい蛇が来たぞ!喰われる前に逃げろー!」
わたくしは昔、よく男の子に
名前でからかわれておりました。
子供って残酷ね。
人の特徴をなんの悪気もなく馬鹿にしてくるの。
特にわたくしが、人見知りでシャイだったからかしら。
余計にからかわれる対象になっていた気がします。
わたくしは毎日泣いていたわ。
それと同時に、自分の名前がとても嫌いになった。
蛇なんて怖い。
女の子らしくもない。
でも、そんなわたくしにも唯一味方がいて。
「おいてめぇら、そんなに暇なら向こうでガキらしく絵本でも読んでろよ。」
……兎がね、いつもわたくしを守ってくださってたの。
家がご近所な上、親同士も仲良し。
わたくしにとって、兎は兄みたいな存在でしたわ。
「仁、わたし自分の名前が嫌いよ……。好きでこんな名前になったわけじゃないのに……っ。」
一度だけ、彼にそう打ち明けたことがあったの。
そしたら彼、なんて言ったと思う?
「あ?!ざけんな、そりゃこっちのセリフだっつの!俺なんかウサギだぞウサギ。蛇の方が敵をまる呑みできてかっけぇじゃねぇか!」
……わたくしカッコよさは求めていなかったのですけど。
なんといいますか、男の子らしい回答。
あまりに裏表のない答えに思わず笑っちゃって。
「……じゃあ仁はわたしに食べられちゃうわね。」
「はっ、ウサギっつっても俺は強ぇからな。華なんか返り討ちにしてやんよ。」
なんだか少し、気が楽になった。
ウサギの名前が嫌だと言っても、
確固たる自信を持ってる彼。
先程言われた言葉も相まって、
わたくしは少しだけ蛇の名前が好きになったわ。
それから、男の子たちがまた名前をいじってきても、
「蛇は強いのよ」なんて心の中で思ったりして。
彼とも冗談めかす感じで、
「蛇」「兎」と呼び合うようにもなったの。
彼のお陰で、わたくしの日々はずっと明るくなった。