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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
そのまま中学は卒業を迎え、
父親の転勤をきっかけに
わたくしは引っ越すことになりましたの。
兎のご両親とはお話ししましたけど、
彼とは顔も見せず終い。
別れの挨拶なんてものはなく、
あまりに呆気ないお別れでしたわ。
もう、彼と会うことはないはず。
わたくしは恋を諦めて、
馴染みのない土地の高校に入学しました。
自分で言うのもおかしな話ですけれど、
わたくしとてもモテたのよ。
素敵な彼氏もできて、
充実した日々を送れていた。
……それなのにね。
────「本当にごめんなさい、やっぱり好きになれないの。」
兎のことが頭から離れなくて、
わたくしはお付き合いしていた相手をフッた。
嫌われているのに、もう会えないのに。
女々しいでしょう?
……そう分かっていても、
わたくしは彼への気持ちを諦めることが出来なかった。
会えなくてもいい。
これは私の自己満足。
それからわたくしは、
自分の性格をお嬢様に寄せる努力を始めたの。
雑誌を読んだり、アニメを見たり。
でも、なかなか難しいものね。
大人になる頃にはこのキャラが素になりましたけど、
どこかいまひとつな出来栄え。
やっぱり、
実際にモデルとなる人がいないと駄目なのかしら。
そう思っていた頃、彼は唐突に現れましたわ。
「初めまして、白馬黒哉です。どうぞ宜しくお願い致します。」
上品な笑みと上品な所作。
纏うオーラは王子様の一言。
わたくしは直感的に、「この人だ」と思ったわ。
仕事を後回しにして、彼の仕草を観察する日々。
もちろん目の保養目的もありますけれど。
そのおかげでユイさんとも仲良くなれて、
更には黒哉様ともお近づきになれました。
それだけであり得ないほど恵まれてる。
これ以上なんて望まない。
もうわたくしは、十分満たされていたのに────
「ちょっと!どうして兎が此処にいらっしゃるわけ?!」
「はぁ?!それはこっちのセリフだっつの蛇!」
……神様は本当にイタズラがお好きね。
わたくしは、彼との再会を果たしてしまった。