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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
「うさ……、ぎ……?」
目を疑ったわ。
どんな女の子にも関心を示さず、
ましてや性的な目で見ることなどあり得ない、
あの彼が。
「────っ」
わたくしを見るクラスの男の子と
同じ目をしていた。
まるで別人みたい。
目を見開きながらも、熱に浮かされたような眼差し。
これまで、
わたくしはその目に何度も不快な思いをしてきた。
正直男性が少しだけ苦手になってしまうほど。
……先程、教室で彼の本心を聞いたせいもあったのかしら。
そんなはずないとは思っていても、
どうしても気持ちを抑えきれなくて。
────パン!
わたくしは、彼の頬を思い切り平手打ちした。
「…私のこと嫌いなんでしょ……っ?最低よ、結局あなたも身体しか見てなかったんじゃない!」
「……っ?!何言って……」
わたくしは困惑する彼を突き放して立ち上がり、
兎を外に押しやった。
今度はすばやく鍵を締めて。
これでもう、彼は入ってこれない。
追い出してからも
わたくしを呼ぶ声が聞こえてきたけど、
それに答えることは一切しなかった。
叩いてごめんなさい。
早く帰って。
心が限界なの。
そんな思考が頭を堂々巡りして。
気づけば、彼の声は止んでいた。
……結局、これが兎との最後の会話になってしまった。
それから、わたくしは学校で
兎と一切関わらないようになりましたの。
叩いちゃったことを謝らなきゃいけないのに。
わたくしの馬鹿げた意地が邪魔をして、
それさえも言えなかった。
「ねぇ兎谷、あんた蛇塚さんになにしたの?」
不思議に思った女の子達が
彼に非難の目を向けるようになったわ。
事情を知らない他人が
どうこう言えるものではないはずなのに。
きっと学校特有のやつね。
更には誰が流したのか、
私たちのおかしな噂も出回る始末。
彼への罪悪感とか、クラスの皆の視線とか。
色々なことが重なって居心地が悪くなり、
わたくしはいつしか不登校になった。