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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
────山下サイド────
私と蛇塚さんは着ていた着物をお店に返却し、
みんなで旅館までの道のりを歩いていく。
彼女の過去を聞いて思ったけど、
うさが言っていた謝りたい幼馴染って
たぶん蛇塚さんだ。
……でも、蛇塚さんのことを鬱陶しいと思っているなら、
どうしてうさは嫌ってる素振りを見せないんだろう。
それどころか、神社で幼馴染のお話をしてくれたとき、
彼はとても大切そうにしてる様子だったし。
一人でそんなことを考えながら歩いていると、
ピタリとうさが足を止めた。
横を向く彼の視線の先には、古ぼけた小さな神社。
『庵林大社』と石碑に掘られている。
「……ここ、夜になるとだいぶやべぇな。変なやつがすげぇウロチョロしてやがる。」
え?
どんなに注意深く目を凝らしても、
そこに人は見当たらない。
気味が悪いほどに静けさを纏っている。
すると、疑問の表情を浮かべる私に向けて、
白馬くんが口を開いた。
「うさは霊感が強いんだよ。御札とか無しで霊障を鎮められるくらい。」
「えっ、そうなの?!」
そんな人がヤバイとか言うってことは、
ここ相当危ないんだ。
旅館から結構近いところにあるのに……。
うさは険しい表情を元に戻し、前を向いてまた歩き出す。
「近付かなきゃ何も起こんねぇよ。さっさと旅館行こうぜ。」
……近付かなきゃ、か。
また盛大なフラグを立てられちゃったよ。
この嫌な予感が、私の思い過ごしであればいいんだけど。
────嫌な予感って、当たっちゃうよね。