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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
────「すごい、広くて綺麗……!」
無事旅館に到着。
通された部屋の襖を開ければ、
そこには豪華で広々とした和の空間が広がっていた。
ちなみに部屋割は女性陣と男性陣。
それぞれ向かい合わせのお部屋に泊まる。
なんだか修学旅行みたいだ。
「まぁ!窓の景色まで素敵ですわ!ほらユイさん、ご覧になって!」
蛇塚さんがはしゃぎながら部屋に足を踏み入れる。
取り付けられた大きな窓からは、
深い緑の木々と情緒溢れる街並みが見て取れた。
「ホントだ、素敵だね。」
そう言いながら、私も部屋に入ろうとしたとき。
「……おい山下、ちょっとだけいいか。」
誰かが私に声をかけた。
振り返ると、
そこには神妙な面持ちで私を見下ろすうさが。
「……?、うんわかった。蛇塚さん、ごめんね。私ちょっと用事あるから、先にくつろいでて。」
私は彼の言葉にコクリと顔を頷かせて、
部屋にいる蛇塚さんに謝りをいれる。
蛇塚さんは私を見て、
「了解しましたわ」と笑顔で答えてくれた。
私はそっと静かに襖を閉め、
後ろにいるうさの方を振り返る。
「うさ、どうしたの?」
「悪ぃな。ここじゃ少しあれだから、別の場所に移ってもいいか。アイツらには聞かれたくねぇことなんだ。」
うさが、低く小さめの声で私に話す。
たぶん普通の声量だと
部屋にいる皆に聞こえてしまう可能性があるからだ。
「わかった、別のところに行こっか。」
私がそう答えるなり、
うさは身体の向きを変えて廊下を歩き出した。
足早な彼に置いていかれないよう、早足でついていく。
いくつもの部屋を通り過ぎ、
廊下の角を曲がる。
そこで、うさの足が止まった。
うさがくるりと踵を返し、
私の方を向いて気まずそうに視線を下に落とす。
「……その、アンタ蛇と仲が良いみてぇだからよ。相談っつーか、なんつーか。」
「うん。」
とても言いづらそう。
うさが首に手を当てて、
視線を下に落としたまま、右往左往に泳がす。
そして、彼は意を決したように少しだけ目を細め、
静かな声で私に告げた。
「────前に話した幼馴染。あれ、蛇のことなんだよ。」