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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
────なるほど。
えっとー、はい、これは……
「うん、だと思った。蛇塚さんから聞いたよ。」
「は?!」
正直に答えるしかない。
うさが素っ頓狂な声をあげながら、
心底驚いた表情で私を見る。
それもそうだよね。
昔の話聞かれてるなんて思わないもん。
「き、聞いたって、全部か?」
「うん多分。うさが蛇塚さん押し倒しちゃったことも聞いた。」
うさの身体がピシャリと硬直する。
「マジかよ……」と言いながら、
どんどん青ざめていく、うさの顔。
私が表情を変えず彼を見つめていると、
彼は観念したように顔を俯かせて、ため息をついた。
「……そうか、それなら余計に話しやすいわ。」
そして、うさは呟くように話の内容を明かす。
「なんつーか、昔のことを蛇に謝りてぇのに謝れなくてよ。
アイツを前にすると昔の調子に戻っちまうし、
なんかアイツのキャラ変わってっし。
ちょっとどうしたらいいのか分かんねぇんだわ。」
うさが困ったように頭をかく。
確かに。
蛇塚さんのキャラってだいぶ変わったみたいだし
困惑するよね。
謝りたいのに謝れない。
たぶん押し倒しちゃった時のことを
気にしてるのかな。
……でも。
「ねぇうさ、蛇塚さんのこと嫌ってるというか、好きじゃないんでしょう?それでも謝りたいって思うの?」
蛇塚さんの話を聞くに、
うさは「好きじゃない」と断言していたはず。
それが疑問でうさに質問をぶつけると、
うさはキョトンとした顔で私に言った。
「嫌ってる?なんだそれ。」
……あれ?
「え、だってうさ、中学の頃に蛇塚さんのこと好きじゃないって……。」
私が困惑しながら言葉をこぼすと、
彼は何かを思い出したように、ハッと目を見開かせた。
「……っ!まさかアイツ、あれを聞いてたのか……?!」
────なにか、おかしい。
彼の目には戸惑いの色が浮かんでいる。
蛇塚さんから聞いた当時の話は、あくまで彼女の視点だ。
それがすべて正解で、真実とは限らない。
うさのこの様子からして、
うさは決して彼女を嫌ってなんかいない。
きっと、なにかがすれ違ってしまっている。