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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇




────ギュッ



「?!」



蛇が勢いよく、俺に抱きついてきた。

突然過ぎて頭が追いつかねぇ。
一体何が起きている。

つか力強ぇなコイツ、地味に痛ぇわ。


「へ、蛇?どうしたんだよ?」


さっきみてぇに
抱き締めることも頭を撫でることも出来ずにいると、
蛇は俺の肩に顔をうずめながら
涙を堪えた声で告げた。






「わたくしは今でも好きよバカ……っ!」






────は?


コイツ今、なんて言った……?
確かに「好き」って……。




「……っ、お前、彼氏は?」

「いませんわ。兎のせいよ……、ずっとあなたが心に残って邪魔をしてくるから、他の方と恋愛できませんの。
昔は両想いだったとか、神様って残酷すぎますわ……。」


だんだんと涙ぐんだ声になりながら、
か細い声が小さく消えていく。

んだよそれ。
嘘ついちまった俺がバカみてぇじゃねぇか。


俺は泣いて抱きつく彼女の頭をそっと撫で、低く囁いた。


「……蛇、こっち向け。」
「イヤよっ、わたくし今ひどい顔してるもの……っ」


彼女が顔を振って抵抗する。


「いいから、気にしねぇよ。」
「わたくしが気にするわ、絶対に綺麗じゃないものっ!」


……頑固なやつ。

意地でも顔を上げたがらない蛇を、
俺は自分でも寒気がするほどの甘い声で呼んだ。






「……華。」





ピクンと身体を跳ねさせる彼女。
この呼び方は幼稚園以来か。

蛇は俺の肩にうずめた顔をゆっくりと離し、
恐る恐る俺の方を見上げた。





その瞬間。










────ちゅっ






「……っ?!」


俺は彼女の唇を塞いだ。

涙でしょっぺぇ。
コイツどんだけ泣いてたんだよ。

重ねた唇をそっと離すと、
彼女は事態を飲み込めていないような表情を浮かべていた。
驚いたからか、涙が引っ込んでる。



「悪ぃ、昔のことってのは嘘。」


鼻先がくっつきそうな距離で話す。
お互いに視線が絡み取られて、目を逸らせない。

俺は彼女の頬に手を添えながら、
人生史上、甘く甘く言葉を告げた。










「────俺も今でも好きだ、華。」










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