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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第3章 本物のヒーロー

「おまっ…ふっざけんな違うわ!ただの仕事仲間だし!先輩だし!まだ恋人じゃねぇし!」
『アー急に大声出さないでくだサーイ、聞こえてるのでー。』


コイツ…!

先程俺が注意したことをそっくりそのまま返しやがった。
本人はしてやったりというように、クスクスと笑いだすし。


『いやぁ、黒哉クンが大切な人って言うの珍しすぎて。にしても、「まだ」ね。ふふっ。ガンバッテ黒哉クン!』


もうやだ今すぐ通話ブチ切って穴に潜りたい。

自ら掘ってしまった墓穴に頭を抱えて後悔する。
冷静になろうと一呼吸おけば、脳裏に浮かぶのは笑った彼女の姿。




「…大切だよ。すごく大切な人だ。」





────だって彼女は唯一、そのままの俺を認めてくれた女性だから。





────山下サイド────


時刻17時00分


平田くんと会うにあたって、私はとあることを決めた。
それは、出来る限り女の子らしい格好をしていくということ。

普通ならそれが当たり前なのかもしれないけど、私達の場合は真逆。どんなに暑い日であっても、長袖のパーカーとジーンズで傷を隠さなければならなかった。



今日は決別の日。最大限の反抗をしよう。



タンスの底に埋まっている、数年前に着ていた服を引っ張り出し、床に広げていく。

フリルが装飾されたフェミニンなワンピース、カッコいい印象を与える茶色のタイトスカート、可愛らしい花柄のトップス…。
数年ぶりに見る女の子らしい衣服は、なんだか気恥ずかしい。


「────よし、これにしよう。」


思考を重ねた末に選んだのは、薄紅色のフレアスカートとボウタイ付きの白いブラウス。
着るのは大学以来だったけど、特に成長はしていないから難なく着ることができた。

「よかった、まだ着れた。」

さて、次はメイクだ。

仕事では白馬くんに馬鹿にさ…、…気に入られるほど(?)ナチュラルメイクだったけど、平田くんと会うときは濃くするのが決まりだった。

「…それなら、メイクは無しがいいよね。」

こんなの普段なら絶対にあり得ないこと。鏡に写る見慣れない自分は、まるで別人みたい。

長く垂らした髪をブラシで梳かしていると、そばに置いていたスマホがLIMEの通知を知らせた。

差出人は平田くん。

昨日からずっと未読無視しているから、きっとかなりご立腹だろう。

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