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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第3章 本物のヒーロー
開けば案の定、束縛と催促の嵐だった。
『どうして早く返信くれないの』『愛してる。俺にはユイしかいない』『会いたい』『今なにしてんの』『電話でろよ』
その他諸々、不在着信もいくつか届いていた。
こんなの日常茶飯事。慣れてる。
私はそれらの言葉に答えることなく、ただ一言、『今から向かうね。』とだけ送信し、そっとスマホを閉じた。
────時刻18時00分『駅前南口広場』
待ち合わせ時刻。
空模様はどんどん重たくなって、今にも雨が降り出しそう。
────大丈夫、絶対に大丈夫。
心の中で何度も呟きながら、白馬くんがくれたお守りを手に取る。
何処にでもありそうな、なんの変哲もないお守り。
それなのに、これを見ているだけで心が軽くなるから不思議だ。一人じゃないって言われてるみたい。
「…白馬くん、私頑張るから。」
大丈夫。大丈夫。
暗示をかけるように優しくお守りを撫でた、その時。
「何を頑張るって?」
────頭上から、平田くんの声が聞こえた。
心臓が鼓動で張り裂けそう。
呼吸が上手く出来ない。
手が震える。
周りの人の声で騒がしいはずなのに、まるで二人だけの空間に隔離されたみたいだ。
私を見下ろす平田くんの視線。怖くて顔を上げられない。
すると、平田くんが突然ポンと私の頭を撫でた。
「そんな服初めて見たわ。似合ってんね。」
…うそ、どういうこと?
普段なら絶対に手をあげられる場面なのに。
驚き見上げた視線の先には、
昔の優しい顔をした平田くんが立っていた。
「化粧も無し?急いでたのか?」
「…どうして殴らないの…?」
私の問いかけにキョトンとする彼。
「別に、今日は気分がいいからだけど。」
つまりは、もし気分が悪かったら今頃とんでもないことになっていたという訳だ。
とりあえずは無事でいれてホッとする。
「…そう。そうなんだ。」
「おう!実は親父の手術が上手くいってよ、まだ生きていけそうなんだ!もう俺すっげぇ安心したよ。」
彼の心底ホッとしたような表情。
平田くんのお父さんとは、一度だけお会いしたことがある。
ベッドに寝たきりではあったものの、笑顔を絶やさない素敵な人だった。