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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第5章 サプライズ


「うん上手。じゃあその形のまま人参に手を置いて、包丁の刃をそっと人参に添えて。」

言われた通りに優しく包丁を添えるフリ。

やっぱり。
やり方を知らないだけで感覚は持ってるんだ。
きっと教えたらすごく上手になるよ。

「オッケー。じゃああとは、刃を押し付けながら腕ごと引く感じで切ってみて。」
「はいデス!ソイヤァ!!」



ズオッ!!
────ゴトン!ゴロゴロゴロ…



その瞬間、思い切り腕を後ろに引きすぎたのか、
切られた人参が無残にも床に叩きつけられた。

「ひょわぁぁああ人参サァァァァン!!」

悲鳴をあげるフリ。

…だめだ、やっぱり切らせるのは諦めよう。
彼にはもっと安全なのがいい。

私は落ちた人参さんを拾いながら、そう悟った。








────「おぉ!これなら出来るデス!」

そう言いながらフリがしてるのは、
ハンバーグのタネを捏ねる作業。
これならどんなに不器用な人でも安全にできるよね。

もちろん切る作業は全部私。
自炊はやってるから、一応切るのは慣れてるんだ。


「ねぇフリ、白馬くんとはいつからの知り合いなの?」

ふと気になった。
こんなふうに、誰かから白馬くんのことを聞ける機会ってまずないから、ちょっと色々聞いてみたい。


「確か高校からデスヨ〜。当時黒哉クンものすごいグレてたデス。」
「え、そうなの?!」

思わず包丁の手が止まる。
ニコニコ捏ねながら「ハイ!」と明るく答えるフリ。

ぐ、グレてた…。全く想像もつかない…。


「ピアスばっしばしに開けて、軽く学校を牛耳る勢いデシタネ〜。僕も子分みたいな感じでつるんでマシタ。今でも当時の不良仲間と連絡取ってマスヨ!」

おぉう…まさかのかなり強い不良グループ…。

なるほど。
だから白馬くんやけに喧嘩慣れしてて、
二人の関係も犬とブリーダーって感じなんだ。
ちょっと納得。

「すごいね。なんか今とは大違いだ。」
「あはは〜、意外とそうでもないデスヨ。黒哉クンはまだグレてる途中デス。」

「え?」

どういうことなんだろう。
私がキョトンとした顔を向けると、
フリは作業を止め、少し困った笑顔で私を見た。


「…あとは黒哉クンから聞いてクダサイ。きっとあなたになら、話してくれると思いますカラ。」


…白馬くんにはまだ、なにか秘密があるらしい。


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