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呟き…
第1章 働けよ…

何故か彼女が泣き出した。
要するに今の会社が怖いから仕事をしたくないと言いたいらしい。
そして彼女の希望とすれば家で好きなように絵本を書いて暮らしたいと…。
そういうのは親の家からちゃんと独立して自分の力だけでやれよ。
私の考えではそうなってしまう。
親からの独立が出来るのならばどんな仕事を広末さんが選ぼうとご両親は何も言わないのだろう。
反対される理由は『怖いから』を理由に彼女が働こうとしない為…。
そろそろ車は広末さんの家の近くまで来た。
その辺りは信号もまともで台風の被害を微塵も感じない地域。
被害がないというだけで幸せだと思う気持ちが広末さんに持てればご両親が普通の会社で働きなさいという気持ちも理解が出来るようになるだろう。
今の彼女にはそれすら難しいと思う。
「あのさ…。」
あまり人に対してとやかく言うのは得意じゃない。
それでも広末さんが涙を拭きながら私を見る。
「そういう話はご両親とよく話し合いなよ。私に言われても私には答えようがないわ。」
私はそうやって広末さんを突き放す。
「でも、専務はなんかあれば森本さんに相談しろって言いました。」
「それは会社内の問題やろ?」
「だから私はあの会社が怖いんです。」
「それは違うんちゃうの?要は広末さんが絵本書きになりたいって根本があるから事務の仕事とかやれないと思ってんじゃないの?」
「違います。私だってちゃんと仕事はしたいとは思ってます。だけど仕事でわからない事とか聞いたらおばさん達に『そんな事も知らないの?』って厳しく言われるんです。私はそれが怖くて次からはもう、わからなくても聞けなくなるからますますおばさん達に怒られて…。」
彼女は家の前に停めた車から降りる事なく延々と自分の思いをぶつけて来る。

