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呟き…
第1章 働けよ…

そりゃ、おめでとう…。
一部は停電をしてないらしい。
それをラッキーと言う彼女にため息が出る。
災害が自分に降り掛からない限りは災害自体が他人事という人。
そんな中でもなんとか中村君を家まで送り届ける事が出来た。
この広末さんの為に私は自分の家の付近をもう一度通過するのかと思うと悲しくなる。
中村君が降りた途端に広末さんが私に言う。
「森本さんはあの会社が楽しいですか?」
彼女の質問に固まった。
「はぁ?」
会社が楽しいってなんなんだ?
うちの会社は充分に賑やかで楽しいっちゃ楽しいが仕事である以上は楽しいとかは関係がない。
「私ね、本当は夢があるんです。」
何も言わない私に対して彼女が勝手に語り出す。
「夢?」
「絵本が書きたいんです。だけど、そういう職業はうちの親が許してくれないから仕方がなく会社に就職するんですけど、なんて言うのかなぁ、自分の居場所じゃないっていつも感じるんですよ。」
一方的な広末さんの言葉に呆れて来る。
要するに会社で働きたくないオーラを私に理解して欲しいらしい。
きっと彼女が求めてるのは私の賛同なのだろう。
「仕事しながら絵本を書けば?」
としか言えない。
私だって趣味で小説モドキを書いてる。
やってやれない事はないだろう。
ちゃんと絵本を完成させて出版社にでも認められれば広末さんのご両親も反対はしないはず…。
「だから…、そういうのはうちの親が認めてくれないんですよ。」
苛立ちを彼女が私にぶつける。
「それはさ、働かずに絵本を書きたいとか言うからじゃないの?」
「私には無理なんですよ。1人で絵本を書いてるような仕事の方がいいんです。会社で他の人と仕事するとか怖くて仕方ないんです。毎日、会社に通うのが怖くて楽しいとか思えないんです。」
広末さんの言いたい事がやっぱりわからない。

